第54話
大きな両手で、ふわりと膨らみを包み込む。
彼の手の中に、紗英の乳房はちょうどよく収まった。
雄々しいてのひらに包まれているという、それだけで、胸が熱くなる。
悠司はゆるゆると、乳房を揉み込むように円を描いた。
「あ……そんなこと、されたら……」
また下肢から、じゅわりと蜜が滴る感じがする。
これからシャワーを浴びるというのに、ここでこんなに感じてしまったら、どうなってしまうのだろう。
微笑んだ悠司は、片手をショーツにかけた。
「このままここで抱いてしまいそうだな。とりあえずシャワーを浴びようか」
ショーツを引き下ろされると、つう……と透明な糸が垂れる。
かぁっと頬を染めた紗英は、狼狽した。
「あっ、あの、見ないで……恥ずかしい!」
それなのに悠司は、まるで貴重なものを見たかのように、じっくりと見入っている。
「すごいな。キスだけでそんなに感じた?」
うろうろと視線をさまよわせた紗英は、顔を真っ赤にしながら頷いた。
「か……感じました……」
「いいね。それだけ俺のキスがよかったってことだろう? すごく嬉しいよ」
頬を緩めた悠司はショーツを足元から脱がせた。
紗英を全裸にすると、彼は素早く自分の衣服を脱いで、カゴに放り込む。
その間、紗英はシュシュで髪をまとめると、悠司に買ってもらったメイク落としを使って顔を洗う。
タオルを渡してくれた悠司が、紗英のシュシュを指差した。
「そのシュシュ……使ってくれてるんだね」
「はい。お気に入りです」
ピンク色のサテンのシュシュは、悠司からのプレゼントだ。
紗英はこれをいつも腕につけて、必要なときに髪をまとめていた。
「ありがとう。俺も紗英からもらったハンカチを大切にしてるよ。もったいなくて使えないんだけどね」
ぎゅっと抱きしめられて、悠司の強靱な肉体を意識する。
硬い筋肉に覆われた鎧のような体は、名匠が造形したごとく麗しい。
「ふふ。またプレゼントしますから、使ってください」
「もうなにもいらないよ。きみがいてくれるだけでいい」
彼と交わす言葉のひとつひとつが、紗英の胸をほろりと優しくほどいた。
悠司にそっと背を促されて、バスルームに入る。
清潔なバスルームは壁も床も、全面が煌めくスノーホワイトに包まれていた。
彼がシャワーのコックを捻ると、温かな湯がタイルを打つ。
スポンジを手にした悠司は、とろりとルビー色のシャワージェルを垂らす。それを泡立てると、バスルームに芳醇な花の香りが広がった。
紗英の腰を抱いて、悠司は嬉しそうにスポンジを掲げる。
「さあ、体を洗ってあげるから、じっとしていて」
「お、お願いします」
首筋から肩、腕、そして胸元へと、柔らかいスポンジが辿っていく。泡がふわふわしていて、ちょっとくすぐったいけれど、気持ちいい。
丹念に洗われて、紗英の全身が泡まみれになる。
「さて、流すか」
「あっ、待って。私も悠司さんの体を洗ってあげる」
悠司がシャワーに手をかけそうになったので、慌てて引き止める。
紗英もしてもらった分を、同じように悠司に返したかった。
「そう? じゃあ、頼むけど、俺は簡単に擦るだけでいいよ。……早くきみの中に入りたいから」
煽るようなことを囁かれ、紗英の頬が朱に染まる。
スポンジを受け取った紗英は、丁寧に悠司の体を擦り、泡立てた。強靱な肉体はどこもかしこも硬くて、まるで鋼のようだ。柔らかい自分の体とはまったく違う。
やがて互いの体を洗うと、悠司はシャワーを丁寧に紗英の体にかけて、泡を洗い流す。それから彼は自分の体も素早く洗い流した。
シャワーを終えると、ふたりはバスルームを出る。
悠司はバスタオルを手にすると、悪戯めいた目を向けた。
「俺が紗英を拭いてあげるから、きみは化粧水をつけていていいよ」
「え、そうですか? それじゃあ……」
素早く自分の体を拭いて、バスタオルを腰に巻きつけた悠司は、もう一枚を広げて紗英の肩にふわりとかける。
紗英は化粧台を向くと、シュシュを外して置いた。ところがパッケージを開けて化粧水を顔につけていると、後ろから悠司の手が胸に回ってくる。
「あっ、ちょっと、悠司さんってば」
焦った紗英だが、化粧水をつけているので手が空いていない。
悠司はバスタオルで拭くふりをして、乳房を揺すった。
慌てて化粧水を塗り終えた紗英は、イタズラな悠司の手を、ぎゅっと握りしめる。
「もう! 油断も隙もないんだから」
「きみにいつでもさわりたいんだ。今度はちゃんと拭くよ」
本気で怒っているわけではない。その証拠に紗英の声は弾んでいた。悠司とこうして戯れるのは心が躍る。
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