第53話

 あり合わせのもので、いろいろと作るのは胸がわくわくする。

 それも悠司と和気藹々と会話をしながらだから、楽しめるのだと思う。

 悠司の好きなところは優しいところや、自立しているところなどたくさんあるけれど、そのひとつに、料理を一緒に楽しく作れることだ。

 愛しそうに目を細めて紗英を見た悠司は、微笑みを浮かべる。

「俺もだよ。紗英と料理してると楽しめるんだ。一緒にいると落ち着くし、なんでもない会話をしているのも心が穏やかになる」

「私もです。不思議ですよね」

「それだけ相性がいいってことだろ。体の相性もいいしな」

 かぁっと紗英の頬が朱を刷いたように赤くなる。

 思わず箸を取り落としそうになってしまった。

「も、もう、悠司さんたら。なにを言い出すんですか」

「今夜、抱きたいな。いいか?」

 赤い顔をうつむかせた紗英は、こくりと頷いた。

 紗英としても、悠司にプロポーズされたこの日に抱かれたかったから。


 食事を終えて後片付けを済ませると、悠司は以前お泊まりしたときと同じように、ふたり分のバスローブとバスタオルをキャビネットから取り出す。

「この間の泊まりで紗英が使った化粧水とか、一泊分がセットになってるパッケージはもう買ってあるから」

「えっ、用意してあるんですか?」

「うん。また泊まるときに必要だろうと思ってね」

 洗面所に見に行くと、なんとお泊まりセットのパッケージが三つ、棚に用意してあった。悠司が急なお泊まりを想定して、コンビニから買っておいてくれたのだ。

 今度から化粧水のボトルを持ってこようと、紗英は思った。

「じゃあ、今日はありがたくこれを使わせていただきます」

 パッケージを手に取ったとき、後ろから強靱な腕で体を包み込まれる。

 紗英の体は、すっぽりと悠司の腕の中に収まった。

「あっ……悠司さん」

「もう完全に俺のものだ。俺に愛される覚悟はできてる?」

 恥ずかしくなった紗英は咄嗟に反応できず、悠司に抱きしめられたまま固まってしまう。

 そんな彼女を、ぎゅっと抱きしめてから、悠司はブラウスの釦をひとつひとつ外していった。

「一緒にシャワーを浴びよう。きみの体を洗ってあげる」

「そんなの……恥ずかしい」

 紗英の言葉は嫌がりながらも躍っていた。

 シャワーを浴びるのまで一緒にするなんて、恥ずかしいけれど、嬉しくて胸が弾む。

 悠司は釦を外すと、後ろからブラウスを脱がせる。そして彼は紗英のスカートに手をかけて、するりと引き下ろした。

「あ……自分で脱ぎます」

「だめだよ。俺に任せるんだ」

 キャミソール姿になった紗英の肩を抱いた悠司は、振り向かせる。ふたりは向き合う形になった。

 そっと、ふたりはくちづけを交わす。

 悠司のキスはいつも甘くて優しい。

 チュ、チュと小鳥のように啄んで、またしっとりとふたりは唇を重ね合わせた。

 唇を合わせながら、悠司の手がキャミソールの紐を外す。

 するりとキャミソールが脱がされて、足元に滑り落ちた。

「あ……」

 続けてブラジャーの紐にも手がかけられる。

 紗英は悠司のくちづけで塞がれているので、目線を下げることができない。脱がされるのを肌の感触だけで味わわされるのは、どきどきと胸が高鳴った。

 背中のホックを外され、はらりとブラジャーが肌を離れた。

 まろびでたふたつの膨らみは、悠司のシャツに擦りつけられる。

「ん、ん……」

 けれど淫らなキスは終わらない。

 ぬるりと唇の合わせを舐められたので、薄く唇を開く。

 そこに、獰猛な舌がもぐり込んだ。

 悠司の舌は歯列を舐め上げてから、敏感な口蓋を突く。

 紗英の体は淫靡な刺激を受けて、びくんと弾んだ。

「あ……ふ……」

 腰の奥が熱くなる。

 じゅわりと愛蜜が溢れてくる感覚に、紗英は内心で驚いた。

 うそ……もう……?

 深いくちづけだけで、体は淫らに濡れていく。

 角度を変えて何度も互いの唇を貪り、濡れた舌を絡め合わせる。

 敏感な粘膜を擦り合わせる快感が、ずくんと体の中心を疼かせた。

 やがて唇が離れると、ふたりを銀糸がつなぐ。

「はっ……はぁ……」

 息を整える紗英に、悠司は艶めいた笑みを向けた。

「きみの舌は極上のベルベットみたいだ。ずっと触れていたくなる」

 ちゅ、と頬にキスを落とした悠司は、そのまま首筋から鎖骨にかけて唇を落としていった。

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