#シン、人魚姫 今時愛ノットイコール、尽くすでしょ?

STORY TELLER 月巳(〜202

#シン、人魚姫 今時愛ノットイコール、尽くすでしょ?

#シン、人魚姫

今時愛ノットイコール、尽くすでしょ?


storyteller  by  Tukimi©︎

2022.12.23

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現代人魚姫——彼女たちは思い思い生きる喜び、それはそれは自由な幸せを全うしました。


めでたしめでたし

—-2022年度、シラ高文化祭市川一歌作、台本、シン人魚姫、より引用


☆☆☆


登場人物たち、人魚姫たちが旅立ち、

それを他の皆が見送るシーンをバックに緞帳がおりながら。


最後の一文——を。

めでたしめでたしと、アナウンス役が言い終えると。


幕の向こうの、

観客席から知った友人の、

一声と、その後に続いた拍手が。

響き渡るなかで、立ちすくんだ私を、抱きしめる先生に、後輩たちに。

演じ終えた、部の仲間たちに。


握られた私の手が震えて、震えて。

引かれるまま何とか舞台袖を次の、書道部に譲るため、体育館の裏口を出て。


もう、終わりだけど。

まだ、やり足りない欲に。

興奮する波に。


やっと現実味がわいた頭で、打ち上げの話をしながら。

私は私の決意を込めた。

書いていたい、自分に正直に、生きようと。






「今年の文化祭の演目は、新訳人魚姫をしてもらえないかしら」


いつもは意見は出さず、部員の意見を訊いてまとめる、顧問の松本先生が。

真っ先に、今年の提案、と言った。

人魚姫を、現代に合う様に新解釈してお芝居はどうかしら?と。


「今年は、市川さんがいるから、

オリジナル台本も可能だし、その、私が今年で最後ですから、最後の我儘として、私が観たいものを、作って頂けないかしら。」


先生に続いて。

部長の志保の声。

「先生にはお世話になっているし、確かに毎年、台本かける人が、いるわけではないから、私は是非したいと思うし、いいんじゃないかと思う。だけど、部長だから決めるのはしたくなくて。

だから、今回まず、先生の提案を今話して頂いたんだけど、どう?みんなは。」


まずは、台本を、と言われた私に。

「一歌は?」

と言われ。私は皆がいいならと、応じる。


すでに去年。一度、私が部の人に合わせて既存の台本をアレンジし、それをみんなにお芝居をしてもらい、昔話のこぶとりじいさんを、近くの老人ホームにて披露したことがあり。


新しいことを、したい気持ちがあっだ私に

先生の提案は、魅力的だった。


それに、先生のお願いなんて、初めてのことで。出来れば期待に応えたいと言う気持ちもある。

だけども、オリジナル台本なら。

要の、新解釈、はどうするか?


そのあたりは、みんなの意見を聞く時間、そして、そこから書く時間が必要で。


時間と、意見をみんなから貰えるなら、やりますと、伝えると。

先生と部長が頷き。

先生が、自ら話を付け足す。

「もし、今回、提案から、オリジナルをするなら、時間が必要だから、新年度が始まってまだ間もない今、早々と話し合いを設けています。」


そう、いつもなら、夏くらいに、話をする、秋の文化祭の演目。

まだ春なのに、とは。

部員同士話していたのだが、

一番それらしい説として、先生辞める時期があるからかなあんていう噂は近からず遠からずだったらしい。



一人一人部員の意見を尋ねて、

反対なく、次の、文化祭は、【新説人魚姫】

となると。

部長に脚本や、演じるためにと促され、

先生が、どうして、人魚姫を、新しくした話を見たいのか語りはじめた。


「私は私の可愛い教え子のみんなには、幸せに生きて欲しいのです。それだけを思いながら居ましたけど。


ちらほら、風の便りにまた、私を頼りにくる子がいて。みな、私の可愛い教え子なのに、私の過去の様に苦しんでいて。

それが、私がどうも好きになれない、御伽話の人魚姫のようで。」


ここで、もう、茶けて、角がテープで張り止めて補修だらけの絵本。

それを、私たち部員に見せて、教卓にそっと置き直すと話を繋いだ。


「貴方達も含めみんな良い子でね。

優しい心で。

誰かのためにと、尽くしてしまう、のか。


夫婦でいたいと頑張るある子は昔の面影なく、ぼろぼろになった体の服の下をあざだらけにして私に会いに来たり、

また別の子は、もう一生一人だと、私と同じオールドミスになると言うとか。


私の時代は、親が言うまま、従い暮らし、親が決めるお見合いのお相手と言われるまま結婚し、夫になった人に従いと言うもので。

私は色々あり、結婚話は破綻、幸い仕事があるからと養われず生きていますけど。


あれから何十年。

同じ悩みに悩まされて、悩む若い子を見ていた時にふと、人魚姫の話を思い出して。

探して開いたら。

尽くし尽くして、捨てられた話に見えて。


悲恋話だと、子供時代の友人は憧れていたけれど。わたしは全然そう思えなくて好きじゃないくせに、友人が貸してと言う本をいつでも貸すわと、持ち続けて。今も、ここにありますけれど。

あの時と同じに今も、私は嫌な話、と思うの。今読むと本当に、女の子が悲しい話よね。

どれだけ犠牲を払っても、報われないなんて。わたしは嫌だと思う。

だから。


尽くさないで幸せになる女の子達の話、に作り変えて頂けないかしら?」



次回の話し合いまでにと。

先生は。

女の子のしあわせの形について、それぞれ意見を、持ち寄ってくれますか?と言い。

志保が次回は明後日の部活に、と話を閉めた。




幸せってなんともいえない気分になる言葉だ。


幸せは、パッケージ売りみたいに。

新製品を買って使って幸せ〜みたいな、CMもある。

母が言うように、きっと良いと言われ高校進学したわたしには、母が言った幸せを感じない。


高校から、どこ大学行く話が常にある今、

高校への進路のあの時、したい事を選んだら幸せだったかなとは思うけど。


誰かが押し付けるかのように訊いてもいない得たらきっと幸せアイテムや、成れたら幸せな仕事、わたしはそれに幸せを感じない未来が見えていて。


親に逆らい、押し切りたい程の進路も、見つからない私には。


小さな幸せ、瞬間瞬間の幸せはわかるけど。

続く幸せとか、従わない、尽くさないで幸せになる生活なんて、見当もつかないから。


次の話し合いが、少し気が重い。

だけど。

幸せに、なりたい、と。気づいて。

開けた我が家の戸は重くて。

いつもより、逃げ出したくて。

急いで自分の部屋に篭り、最低限以外は部屋を出ないで、そして。


初めて幸せに、なる方法を、私は私なりに考えてみることにした。


☆☆☆

話し合いの日。

松本先生は、今日は基本皆の話し合いを見守ると言い、部長に任せますと志保に話を振ると、にこにこと楽しげに微笑んで座っていた。


私から行くね、と志保が、黒板に書く。


【少女→結婚🟰幸せに暮らしました】


「よく言う理想の幸せって本なら、

だけど、結婚🟰幸せに暮らしましたじゃ無いよね、と思う。

私、正直言って男子が、素敵だなと思ったこと、芸能人しかなくて。

好きだって言われて付き合ってみたことあるんだけど、会いたいだの、こうしてほしいぃの、要望が多いわがままな相手の理想の彼女になるの、無理だなぁって早々に振ったわ。」


部員の何人かが頷くなかで。


一年生の篠原ちゃんが、手を挙げる。


「話の途中に、ごめんなさい。あの、そもそもなんですけど、尽くすこと、とか、結婚って幸せに成りにくいのですか?

親にあんたは自由だから周りによく、合わせなさいと言われるんですけど」


その声に何人かが、私もと言う中で。

志保が、篠原ちゃんに問いかける。


「例えば、篠原ちゃんに彼氏が出来たとして。

彼氏に貴方の大好きな俳優さんの、ファン止めてほしいと、言われたら止める?」

やめるかも、彼が言うならと言う彼女に、志保は言葉を重ねる。

「止めるのも、一つの考え方だし、篠原ちゃんが1ミリも後悔しないならまあ、それも悪くは無い、無いけどさ?

次は、黒髪ロングヘアーにして、とかスカート履かないでとか、他の男と目すら合わせないでとか、友達と出掛けるなら俺といてとか

色々、してほしいて言ってきたら、全て、受け入れる?それ我慢なく受け入れられる?」



「そんな、いっぱいお願いされても、無理だし我慢できないですよー。と言うかそんな風に要求ばっかなんですか?恋愛するって」


「尽くすって、良い言葉に聞こえるけれども。貴方の希望やお願いをもし言わずに、もしくは言えども譲ってばかりで相手に合わせる、だけだと、相手には最高だが、貴方にとって我慢しかない関係になるよね?


それってさ。

よく言う、男を立てる女とか言うやつだけど、それ、篠原ちゃん的に幸せそう?」


「それは。そうなんですが。幸せラブラブなご夫婦もいますやん。私はそうなりたいし、そう言う人といたいと選んで結婚したいんです!ただ、結婚🟰幸せに暮らしましたではないのは分かりましたけど、

じゃあ、実際に、幸せそうなカップルさんはどんな感じなんかなぁ。」


あ。じゃあ、桜さんと彼氏さんは?

と志保に話を振られた彼氏持ちなな桜さんは、

「そもそも、何で皆彼に会わせるのかしら?」


逆に、みんなへの、どうして?と言う質問。


訊かれても首を傾げるみんなに、心底わからないと言う顔で、桜さんは話の説明を付け足す。


「彼氏のタク君、何訊いても桜のしたいようにしたらええよ、言うし。兄も親もそんなんやから、合わすより合わせてくれる人が多くて」


数分、沈黙の間、それぞれ桜さんが誰かとやりとりしたらみんなが桜さんに譲る、そんな想像をして。

困った顔の桜さんをみながら。

部員めいめいが。

ため息なんか、心の声なんか、声にならないうめきみたいな、あーだかうーだかわからない声を吐いた。


が、どうして尽くすかについて、尋ねる桜さんに。

志保が頭をかきながら。


「相手が好きなものを好きになり、好きな人の視界に入りたいとか、相手を喜ばせて、相手に好かれたいとかさ。

どんどん仲良くなりたい、好きになってもらいたい、彼にとって有益な私と思ってもらいたくて、さ。だから。

好かれるために、合わせるって私もみんなも考えるんだけど?桜さん的には違うんですか?」


「うち、嫌なことは嫌やなあ。

無理強いしはる人なんて、そうね、たまに居らはるけど男やろうと女の子やろうと、もちろん年下、年上、かぞくやってもお断りや。

まあ、私が嫌なん、親や兄や彼がすることないし、誰かに直接嫌なんて言わなくてもウチの家族やらみんな、代わりに言って対処してくれ出るけどな。」


「確かになるほど、そうなんかなあ」


桜さん家族は彼氏さん含め仲良しさんらしく、毎年の文化祭準備中や、文化祭日など折に触れ私たち演劇部は、部員皆様にって差し入れ応援を受けていて。


文化祭日、ご家族や彼と話す桜さんをみてその良い関係を見ているから。


多分。

一年生以外は、何となく。

それを想像し、一年生たちはそれを知らずとも、桜さん御一行様は我が校でも有名な話で。噂でしっかり知っているらしく。


会ったことない、一年生の橙子ちゃんが。

「会ったことないけど話聞くとめっちゃ羨ましいっす」


と呟いて。

橙子ちゃんの隣に座っている弓月ちゃんが。

「桜先輩にわがままとか言われたら、考えずに、ハイッて頷きたくなる空気がありますよねー」


「確かに。お願いされたら、ハイしかない、かも」

と志保も頷く中。

桜さんの親友、な、紀穂が。

冗談混じりに。


「桜、この機会になんかお願いしたら?

て言うか思い出したけど、桜がお願いして断られたん見たことないかも。」


と、ここで。各人の恋愛話に横ずれしたところで。

少し話逸れてきてますよ、と松本先生の一声。


「あ、すみません」

「良いのよ部長、さて、話を戻して桜さん、尋ねても良い?」


先生は。話の話題だった桜さんのわがままについて、尋ねた。


「あなたが無茶苦茶ないわがままを言わないことは、普段接していてわかります。

だから、聞きたいのだけど、わがままを通す時って例えばどんな時。」


「そうですね。わたしが我慢できない嫌な時、後は、頼んでも、相手が困らない範囲でのわたしがして欲しいこと、ですかね」


だから、桜のお願いみんなに断られないんだと紀穂が言い、ものを忘れ借りすぎでよく人に断られるNo.1な、塚ちゃんは。

お願いって何でもしていいわけじゃないんだなぁと言い。


少し、全員が、桜さんのわがまま、お願いの仕方についてあれこれ話した後。


志保が話を纏めにかかる。


「つまり。私たちが確認したのは、まず、結婚=幸せではない事。

次に、相手に合わせる事で好きになってもらいたくなるけど、合わせ続けると自分が我慢ばかりになり、幸せに過ごすせない。


で、多少、桜さんが言う、我慢できない事を譲らず、お願いして相手にも、分かって貰いと、桜さんみたく、ずっとラブラブ出来る、的な話、ですね?


で、本題は。

人魚姫の、泡にならずに、言いなりにならずに、幸せになる、その。

姫の幸せって何だろう?かなと思うの。でね、脚本的に、一歌はどう考えてる?」



志保からの振り。

私は今、三人くらいを三姉妹な人魚姫としてしたいと考えていることを伝え、

今私は、沢山の幸せ要素を姫たちに託したい話をしてみる。


「今時。

結婚してうまくいかず苦労するなら一人でいいと言う話もある。

籍を入れない人もいる。


公表してお互い理解の上複数の人と付き合う人も。同性カップルもいる。


もとより恋愛感情が持てない人もいる。


一人きりの人も、家族全員で過ごしたい人も

本当に色々いるけど。

私は。沢山のありとあらゆる幸せを得てめでたしめでたしストーリーにしたいなと思うの。


あれだめこれダメはよく聞くけど。


何処か誰かが貰って幸せになれるなら、私らだって貰って幸せになっていいし、男だから、与えられがちなものを私たちが貰っても良いはずなのに、

何でダメかは曖昧な癖にダメだと言うそれを、諦めずに得る女の子として、姫を描きたいなと思う。


で、姫が得てしまうのが、

素敵な家でも、彼でも、恋でも友でも、私たちが欲しいものを、なんでも彼女が彼女のまま得てしまう話、とかどう?と考えるけど。」


みんなはどうか、と意見を振ると。

志保が。


「つまりなんやかんや、言われても、最後、女の子の夢総取りして幸せになっちゃいました、な話にしませんかと言う話で。

とりあえずみんなの得たい幸せな夢を出してもらい、それを最後一歌が脚本に取りまとめるよ、と言う事で良い?」


「うん、それでいいなら」



他部員から、また顧問で提案した先生からも理解を得て。

時間切れな今日は。


各部員。

未来の自分が得たいものについて。

1人一案持つ事、とし。

私。一歌は。

話し合いから閃いた脚本案の、イメージを少しでも文に起こすことを内心決めて。


次回まで、お開き。


☆☆☆

さて三度目の話の日。

根強い、結婚願望や将来それぞれ成りたい仕事、暮らしたい生活、様々に。

現実的か否かは別にして、してみたいやってみたい話をして。


三人の人魚姫たちは、今時の私たちのように、周りの人に、何と言われようとしたい事を貫いて、周りが彼女達に、ついてくる、

そんな、尽くすだけ以外の関係でも上手く未来を描きたいと考えたとき。

沢山の未来を見せてみたくて。


1人はみんなの憧れ幸せな結婚しても幸せ、1人は結婚しないけどパートナーがいて、仕事に夢中になる幸せ、最後の1人は友達と和気藹々な幸せを。


そう、それぞれに、

会社で部下とバリバリ働く人生や、パートナーの相手に尽くされる、追っかけられる人生や。旅行会社の人として旅する人生を当てて。


それぞれ、だけど幸せよ!と言う未来をにと。話し合いから、改稿して。


主役かつ、今年で最後の三年三人が、成りたい未来の姿や幸せな人間関係をそのまま設定に盛り込んだら。


部内に、見せて。

最後に松本先生に、部長の志保と完成台本を見せにゆく。


「どう、ですかね?」


「とても……良い本ね。すごく、良い貴方達らしい話で」


言葉の途中、慌ててハンカチを探り目頭に当てる先生に戸惑う、私たち。

「ごめんなさい、いや、ほんっと、あははは笑えて泣けてくるわ」


楽しみにしているわ、芝居をと。

先生の前を後にして。

帰路、志保が。

「一歌さ、先生、泣いてたよね?」

「私もそう思った。でも、悲しくてじゃなかったよね?人魚姫役の桜さんが最後彼とクルーザーで旅行する設定だか、優恵がいわゆる逆ハーレムしながらも結婚せずにBL漫画家してバリバリ稼ぐ話とか、あのあたり大爆笑だったやん。」


「多分、笑えたのは間違いなく事実だけどさ。何かしら先生が、最後のお願いとか言って私たちに仰るくらいの過去出来事あったのかもしれないなあって、さ」


「うちの親と先生より若いけど、結婚せっつかれ、結婚したら子供を早くとやいやい言われて、子が育てば、この出来にあれこれ口出しやゆうて何時ぞや、ぶりぶり私に、怒ってたよ。私の出来が悪いから父の母に色々言われるって」


「マジで?」


いつかみた志保のお母さんは、志保の家で試験勉強した時手作りのお菓子を差し入れてくれて、うちの親よりおしゃれで、家事ができる、優しそうな人だって見えたけど。


「親の顔ってさ、外でいい人な分不満は身内に言うタイプでさ。しかも。自分が悪いなんて思わず相手が悪い事したから、と自己弁護ばっかするんだよね、嫌なら嫌って言えばいいのに、すぐ、母に怒る私の出来てない事見つけて話を私が悪い話にすり替えて、怒るんだよねー、テストの点とか夜更かしとかさ」



「頭いいのに、志保が、いつもクラスで上位の点数を取るのに、一番じゃないと落ち込む理由、それ?まさか」



「まあねー。ネチネチ言われるより、言われる材料潰す方が建設的でしょう?100点取ろうと何かしら嫌味言うんだけど、長いより短いほうが楽だから」


色々ある。

幸せになる前に、まず、何にせよ生きなきゃいけないし、生きるために、嫌なことをわかっていても、背中丸めて受けに行く時がある。


そんな、話を。

三年一緒だった志保と、していなかったことに気づいて。何となく。

お互いの家族の話をし、桜さん家族に憧れる、なんて話に終わり。分かれ道。


またね、と。

志保と分かれる分かれ道で。

手を降り離れかけたところで、ひらめいた。

「あ、志保、台本なんだけど……内緒でさ——」



夏、を通り越し。

秋。


毎年晴れるのよねと、桜さんが言う先の空は日本晴れ。


先生が袖に見守るなか、お洋服をきた現代人魚姫たちは周りの声は袖にして。

人間と同じ服を着て海藻じゃなくスナック菓子を頬張り、来た見合い話の写真は鍋敷きにして、好きな人、好きなことを選び抜き。



周りが彼女達から離れがたく。

彼女達に合わせる形に、未来が決まって。


1人の姫が

『さて。周りなんか置いて今日は私達だけで遊びましょうか。うちは、旦那に任せたし』


『あ、私は、仕事前倒しして、作った、有給連休で今からでもいけるわ。来てるのこれはいつもの、お誘いだし』

と2人目が腕時計をみ、あえて沢山来ている彼女へのお誘い連絡を無視し。

視線を、三人目に向けると。


『そうよねー、あ、もう1人呼びましょうよ』

と言う三人目が舞台袖に帰り。

突然、四人目の姫として人を引き出してきて。

その首にスカーフを一巻きし。

『一緒に、人生行きたくて。

私たちは自由仲間、ですから、歳によらず』

目を白黒する、突然の、出演に困る松本先生が姫たちを見る間に。


出ていない他部員が舞台の右袖近くに整列し。

並びを見た、1の姫、桜さんが言う。

『さあ、私たちは旅に行きましょ』


その一言に。

せーの、の2呼吸あけて。

整列組で。

『『『『『『『いってらっしゃいませ、人生の旅へ』』』』』』』




先生が驚いたまま。

声が出ぬままに芝居が終わり。

カーテンコールで実はドッキリなぶつけ本番演出に乗って頂いたネタバラシをして。


「今回、飛び入り協力して頂きました、本年度最後な松本先生にこの場を借りて、部員から花束を」


文化祭進行役の放送部の声で。

拍手を促す声、そして。

部員や、学校関係者の拍手。



世間で、感染症が流行し学校初外部の人を招かない、静かな文化祭は。

私たちにとって今まで最大の賑ぎわいで幕を下ろした。


☆☆☆

突然。

先生も、自由な人魚姫の一員でいいやん、とひらめいた。

先生も自由の象徴であり、幸せを体現する人魚姫役に出したらと考えた私は。


その場の帰りかけた志保を呼び止め、相談し。


前強くお願いしても、先生が主役は学生だからと、配役として舞台に上がって頂けないかったことから引っ張り出しちゃえ!と2人の話が盛り上がるまま、まずは同じ三年部員に話をし。


先生のいない場を選び

一年、二年のリーダー部員とも話をつけ。

皆の意思を確認したら。


後は。内緒のドッキリ準備をすすめる。


本番前までは先生に見せたストーリーを演じて。本番はアナウンス役の部員も、皆舞台に上がり演者として、幸せや自由の人としてたち、姫たちの門出を祝う。


で。最後先生にお礼をしたい部分で。


放送部に先生ドッキリの協力を得て、

演劇部が出し物の時間押しても大丈夫な最後に出し物になるよう内密に順の取り計らいをしてもらい、また部員が出来ない拍手の音頭、やアナウンスなどもお願いして。

と、仕込みだらけの人生最後のお芝居は。


松本先生の大泣きと拍手、そして。

ドッキリ仕掛けた側も泣いて。

なかなか長引いたけど。


みんな上手くいって。

さあ、明日からは、また受験勉強一色なのだけど。



松本先生が、仲間に入れてくれて、自由よねって言って貰えて嬉しかったと述べたとき、

胸が幸せに詰まる気持ちがして。

鼻がつんとして。


ああ、私、描きたい。

台本で、素敵な話をと思いながら、

今回の台本も歴代の部の台本用本棚にさして。戸棚を閉める。



また、これまでの、部のスペースに置いた私物も鞄と手提げにしまい。


卒業の足音がする、明日から居場所がない場所を出ると。

校門前に、志保やら篠原ちゃんやら部のみんなが呼ぶ声。

一歌先輩だの、一歌だの、市川先輩だの。

やけに恥ずかしいから、行きたくない足が、下がる気持ち、が上がるけど。


打ち上げは、カラオケっしょと言い前もって予約してくれたらしい塚ちゃんが跳ねながら。

早く早くと言っていて。

行かなきゃ来ると立ち止まっていたら、走って来ながら転んでもう。

まるで締まらないし、コントだし何より、必死に呼ばれる、私の今がなんか愛され女子?なんて頭沸かしてさ。


つい、うっかり泣き笑いながら。


私もお待たせと、駆け寄る。

そんな必死にしなくてもいい、けど。

必死になってした、今日までは、私も演劇部員、そして。


これからは、私も先生が願う可愛い、私の幸せをとりに行く幸せな教え子の1人としてなる為にも。

楽しむ。

自由に。

そう、今日は。


「目一杯楽しもうねー!!」


「「「「「「「おおぉ〜っ」」」」」」」



-お仕舞い-

........... ........... ........... ........... ...........

【後書き☆今宵は少し話を】

家族とも、友人とも、そして、彼氏彼女、パートナーさん、またたとえたまたますれ違いの知らない人も。


誰かだけが我慢して保つものは壊れます。


犠牲になる、と言うと言い方はキツイかも知れませんが。


貴方の我慢が、無理やりなら、後で泣いたり怒ったり、して。

感情を出して貴方の気持ちのわだかまりを、出す時間が必要になるし、一見平和に保たれた、貴方の我慢の上にある、貴方以外に都合のいい当たり前を崩す大変さがあります。


だから。

可能なら。

いつかは話す話し合いを、傷浅く大きな争いになる前に。

あらかじめ、コレは無理、例えば、蛇と暮らすは無理とか蛇の餌は自分たち人間が食べるものの冷蔵庫とは別に保管してとか。

その一線だけ、は誰と接する時も、貴方のためそして相手のために、守りながら人間関係を繋ぎたいなあ、と。


私は思います。

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