第十四章 退去
第14話
たぬきさんと幸人くんは、ジャガイモ、人参、たまねぎ、シチューのルウを買ってきた。五人ぐらいしかここに住んでいないから、少なめに、そして幸人くんがいるから野菜の切り口を小さく切って、肉なしのシチューを作った。たぬきさんは
「今日は、特別だよ!」と言っていた。
「あの大きい鉄板みたいなのは?」と僕が聞くと、
「ああ、あれは炊き出しの人がやっているんだよ。だから、炊き出しの人、合わせて九人ぐらいかな。」そうなんだ、と僕は思った。
夜。夜回りの人がやってきた。夜回りの人というのは、”ホームレス(路上生活者)さん、具合はどうですか”とか、具合を聞いてくれるんだ。あと、おにぎりをくれる。冬だと、毛布やカイロをくれたりしてるんだって。ありがたい。
夜回りのボランティアの人は、子どもがいることに大層ビックリしたようだよ。僕の時も驚いてたけど。
次の早朝。今度は譲くんも茜ちゃんもラジオ体操に来てた。
「昨日は、どうしてたの?」と僕が聞くと
「お店の手伝いしてたんだ。」と譲くんが恥ずかしげに言った。ん?どうしたんだろう?
そして、昼。市役所の人が来た。市役所の人に「ここは退去してください」と、はーちゃんたちは言われたようだ。僕が居たら、さっさと追い出してしまってたのにな。カフェに行っていたから。食い止めようがなかった。
はーちゃんたちは、そんな市役所の人たちの態度に立腹してしまっていた。今まで、”放ったらかし”だったのに、「出ていけ」なんて。自分の都合だけで動いている、って話してた。
その場にいた幸人くんは、そんな、はーちゃんたちの態度にわからないでいた。
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