第十一章 幸人くん

第11話

そのカフェは、路上生活者さんたちにとって、"居場所"だと感じた。だって、すごく居心地がいいんだもの!こんな良いところ、"居場所"じゃない訳ない!と思った。

だって、幸人くんという子が

「おっちゃん、将棋やるでー」って将棋しに来るし、僕もお客さん来ない間は、好きなことしてていいって栞さんに言われた。だからミントティーを飲みながら好きな本を読んだ。読んでたら、幸人くんが来た。

「僕、コーヒー。」って言うもんだから、僕は

「子どもはジュースだろ。」って言って、ジュースをいれてあげた。

「僕、家出してきたんだ!」と、幸人くんは自慢げに言った。えっ、家出?僕はビックリして腰をぬかしてしまった。

「大丈夫?」との幸人くんの言葉に我に返り、どうしよう、と思った。栞さんは女の人だから駄目だし、はーちゃんに電話すると

「いいよー。」と答えが返ってきた。

「幸人くん、後でな。」と僕は言った。栞さんが来たのだ。

「じゃあ、また後でね。」と幸人くんはどこかに行ってしまった。


カフェが終わった後、幸人くんと待ち合わせした。

幸人くんは歩きながら、

「僕、いじめられてるんだ!」と陽気に言った。えっ?いじめ?僕はビックリしてしまった。

「でもね、この将棋するカフェで、なんとかいけてるんだ!」と言った。なんて嬉しい言葉!僕は誇らしくなった。でも、いじめはダメだなぁ。

僕は幸人くんと手をつないで蝶々橋まで急いだ。そして、途中、電車で、幸人くんのリュックの紐がゆるんでいたので、内緒で、直した。


蝶々橋。はーちゃんと合流した。幸人くんは、たぬきさんのところで寝ることになった。幸人くんのお母さんには一応、電話しといた。幸人くんのお母さんは、すごく陽気で、"幸人を宜しくお願いします"と言われ、僕はうらやましくなった。

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