第八章 ラジオ体操
第8話
二日目。早朝、起きて、広場に出て、ラジオ体操。僕の目の前に譲くんという人と茜ちゃんという子がいた。幸人くんは僕ぐらいの歳だった。茜ちゃんは十才ぐらいかなぁ。お友達になったよ。兄妹なのかなぁ。眠くて、ぐずぐずしている茜ちゃんを譲くんは叱っていた。やっぱり妹は良いものだな、と思い、少しホームシックになった。ラジオ体操は終わり、茜ちゃんたちと"バイバイ"をし、朝食。煎餅を食べた。はーちゃんも煎餅を食べた。美味しいね、って言い合ってた。そして、持ってくるものが足りなかったので、その時、家に帰って、雨合羽を持ってきた。そして、母に「これ持っていきなさい」とミントを持たされた。ミント?と思ったけれど、母が言うには「お世話になっているから」と言っていた。
桃子は友達のところに行っていて、おらず、ああ、残念だな、と思った。
夕方。昨日、見つけた、新聞配達のバイトに出かけた。しんどかった。体力がないので、ものすごくしんどかった。その一言につきた。そんな僕を、はーちゃんは笑っていた。
夜。スーパー銭湯に行った。
「労うためだからね。」と、はーちゃんは言っていたが、僕は大きなお世話だと思った。
はーちゃんに頭を洗ってもらい、櫛で髪をといてもらった。それは父にも母にもやってもらったことがなかったので、本当に心地よかった。それを、はーちゃんに言うと、さすがにそれはない、と話してくれた。
「でも、子どもの頃は放置だったよ?」と僕が話しても、はーちゃんは、うんとも、すんとも言わない。えー。蝶々橋に帰って、たぬきさんにビックリされたよ。僕らが、ふん!ってしているんだもの。
三日目の朝。僕は昨日のことなんか忘れて、はーちゃんに「おはようございます」と挨拶した。はーちゃんもそれに応えてくれた。
そして、三時頃、事件が起こった。バイトに出かける前だ。茜ちゃんに出会った。
茜ちゃんが
「お兄ちゃん、どこに行ったか知ってる?」と聞いた。僕は知らなかったので
「いや、わからないね。どこだろね。」と答えた。
「どこだろう?」茜ちゃんはパニックに陥った。
「大丈夫だよ。」と僕は優しく答えた。
「なんで、そんなこと、わかるのー?」「いや、何でかな。」と、僕らの押し問答が始まった。その時、
「茜っ!」と聞き覚えのある声が耳に届いた。
「すみません。お世話になってしまって・・・」「いえ、いいんですよ。」と、僕が言うと、譲くんが
「俺、何か、することありますかっ!?」と聞いてきた。へっ?何か、すること?僕は困ってしまった。
「何か、ここを守るとか、あと、お茶でもいいんですけど・・」譲くんは後ろのほうをごにょごにょ言った。茜ちゃんが
「お兄ちゃん、それじゃあ、わからないよー。」と言った。それにつられてか譲くんは
「あの!お茶がしたいです!」と答えた。
「でも、僕、なけなしのお金しか持ってないですよ。」と僕が答えると
「いいんです。これのお礼ですから。」と言い、去っていった。そして、新聞配達に向かう僕の後ろ姿を茜ちゃんが見つめていた。
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