第五章 はーちゃんとの交流

第5話

僕らが、はーちゃんと仲良くなって、父は不機嫌そうだったが、母はそうでもなかった。

「やっと、本当の友達ができるのね。」と嬉しそうにリビングで話した。うちの親は勝手気ままで、今ではマシになったけど、子どもの時、僕らを放置したから、僕は、その言葉を鵜呑みにしなかった。

夏。海の季節。はーちゃんとバーベキューをすることになった。うちの家だ。呼んだんだ。父は、それでも良い顔をしなかった。ただ、僕らの気持ちには気づいているんだと思う。そう思った。

楽しかった。はーちゃんが肉を焼いてくれてね、それが上手いんだ。父は、それでも、良い顔をしなかった。ただ、ビールを呑んでいた。

後で母が、

「肉を焼くのが上手いって。お父様も誉めてらしたわよ。」と言った。それを聞いて、僕も桃子も"バンザイ"をした!さすが、はーちゃんだ!

そして、はーちゃんとの交流が正式に認められた!すごく嬉しい!叫びたいほどだ!

秋。紅葉の季節。僕が紅葉を観に行かないかと、はーちゃんを誘った。家の近くに紅葉があるんだ。紅葉のカーテンというか。それを、はーちゃんに観せてあげたい、と思った。僕と桃子との策だ。父も母も賛成してくれた。でも、はーちゃんは、うんとも、すんとも言ってくれなかった。多分、自分の服にコンプレックスを抱いているんじゃないか、と僕は勝手に推測した。

だが、はーちゃんは、連れてきたい人がいる、と言ってきた。なんだ、はーちゃんにもイイ人がいるんじゃないか、その時は軽く考えていた。

だが、紅葉の日。その考えは脆く崩れさる。三人も連れてきたのだ。友達といって。そして、どんちゃん騒ぎを始めた。

「はーちゃん、騙されているのかな?」と、桃子が言った。

「いや、キチンと見てごらん。」と僕が言った。すると、桃子が観察し始めた。うふふ。可愛い。

「そうやん!みんな友達やん!」と桃子が叫んだので、桃子に、みんなの視線が集中してしまった。そして、みんなの視線が自分にある、と気づいた桃子は

「ごめんなさい。」とうつむいた。

「いいよ。」と、はーちゃんは桃子の方に行き、桃子を抱き上げた。僕と桃子はビックリしてしまった。桃子は固まったみたいで、

「わたし、はーちゃんのお嫁さんになる!」と答えた。僕は、またビックリして、はーちゃんを見た。はーちゃんは、まんざらでもない様子でいた。父は驚いて、桃子と同様に固まっていた。

「羽鳥さん、これはどういうことかね?」と、父は、はーちゃんを問い詰めた。

「いや。レディーが言うものだから、無下にはできないですよ。」と、はーちゃんは答えた。

「では、一日会っての人でも受け入れるんですかね?それに、先程、桃子が"友達"だと言ったと思うのですが、本当ですか?」

「"友達"は本当です。桃子ちゃんは可愛いからねー。」と、"ねー"の部分は、桃子に対して言った。対して、桃子も「ねー」と言っていた。

父はボーゼンとした。僕は、そうなんか、と思った。意外だ。でも、すっと受け入れた。桃子は可愛いからなぁ。

しかし、母には申し訳ないことをしたな、と思った。だって、騒ぐから、近所に謝らないといけないし、はーちゃんの友達にも料理を出さなければならないし、あと、横から、こうしたら料理うまくなるよ、という指示が出るしね、たまったもんじゃなかったと思う。その夜が終わり、はーちゃんたちが帰っていった。

「はあ。」と僕らは、溜息をついた。

「ねぇ。はーちゃん、今度いつ来るの。そして、なんで、溜息ついてるの!」と桃子は文句を言っていたが、彼女以外の僕らは相当ストレスが溜まっていたらしい。言葉を交わす気力もなかった。

ただ、お土産はもらった。地酒だ。はーちゃん、お金、いっただろうなぁ、と思った。

そして、冬。はーちゃんたちは大丈夫なんだろうか、桃子が騒いで

「電話、電話。」って言うもんだから、大変。はーちゃんに電話したら"大丈夫だ"と言ってくれた。その他の人たちも大丈夫だって。はーちゃんは、僕が、そんな電話をしたことにいたく感動してた風に感じたな。

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