病巣

憑弥山イタク

病巣

 近寄るな。

 邪魔だ。

 離れろ。

 死ね。

 浴びても浴びても止まらない、罵倒という汚水のシャワー。時には、罵倒を丸めた泥団子をなげつけられ、泥団子の中に隠された針が私の肌を突き破る。

 私が笑えば、人は眉を顰める。きっと私の笑顔は酷く醜いのだろう。

 私が喋れば、人は私を睨む。きっと私の声は酷く掠れているのだろう。

 私が歩けば、人は無言で避ける。きっと私の体は酷く穢れているのだろう。

 何処に居ても、其処に居る人々は、私のことを貶す。まるで病巣を指さす白血球ように、私へ攻撃的な眼差しを向ける。

 そうだ。私は病巣なのだ。

 其処に居るだけで誰かを不幸にして、其処に居るだけで誰かに迷惑をかける、生きる価値の無い病巣なのだ。

 病巣ならば、大人しく死ぬべきなのだろうか。

 病巣ならば、アルコールで死ねるのだろうか。

 気付いた時には日本酒を浴び、日本酒を煽り、眠っていた。

 次の朝。酒臭い胃液を口から吐き出し、私は気付いた。


 ああ、そうか。

 私は、人間だった。

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病巣 憑弥山イタク @Itaku_Tsukimiyama

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