病巣
憑弥山イタク
病巣
近寄るな。
邪魔だ。
離れろ。
死ね。
浴びても浴びても止まらない、罵倒という汚水のシャワー。時には、罵倒を丸めた泥団子をなげつけられ、泥団子の中に隠された針が私の肌を突き破る。
私が笑えば、人は眉を顰める。きっと私の笑顔は酷く醜いのだろう。
私が喋れば、人は私を睨む。きっと私の声は酷く掠れているのだろう。
私が歩けば、人は無言で避ける。きっと私の体は酷く穢れているのだろう。
何処に居ても、其処に居る人々は、私のことを貶す。まるで病巣を指さす白血球ように、私へ攻撃的な眼差しを向ける。
そうだ。私は病巣なのだ。
其処に居るだけで誰かを不幸にして、其処に居るだけで誰かに迷惑をかける、生きる価値の無い病巣なのだ。
病巣ならば、大人しく死ぬべきなのだろうか。
病巣ならば、アルコールで死ねるのだろうか。
気付いた時には日本酒を浴び、日本酒を煽り、眠っていた。
次の朝。酒臭い胃液を口から吐き出し、私は気付いた。
ああ、そうか。
私は、人間だった。
病巣 憑弥山イタク @Itaku_Tsukimiyama
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます