会話

男「そういえば、この前公開したやつはどうだった?」


女「とてもよかったよ。君らしさがよく出ていた。けど、物語のその後が気になったね。考察が捗るといえば聞こえはいいけど、作者の責任を放棄している感じがした」


男「元来、物語は読者を歓迎しないものさ」


女「優しくないね」


男「優しくないからね」


女「そういえば、変な夢を見たんだ」


男「へえ、どんな?」


女「君と本屋巡りをする夢」


男「ネット上で?」


女「外を出歩いて」


男「さすが夢だ。現実なら、雪に埋まって、溶けてしまうね」


女「なんだか洒落ていそうなのに、よく考えてみるとグロテスクだ」


男「雪解けが待ち遠しいなあ」


女「あ、デジャヴだ」


男「こんな会話は毎日しているからね」




男「そういえば、最近はどう?子供のころの野望は果たせそう?」


女「順調だよ、人生と同じように」


男「じゃあうまくいってないのかな。というか、そろそろ何をしているのか教えてくれない?」


女「何もしてないよ。文字通りね」


男「文字通りじゃない用法ってなんだ……」


女「逆に、君はどう?執筆は捗ってる?」


男「そろそろクリスマスが近づいているから、多分大丈夫」


女「一年中雪が降り止まないのに、クリスマスの雰囲気とやらは健在なんだ」


男「一年中チョコは食べるのに、バレンタインの浮かれ具合が落ちないのと一緒だよ」


女「今は外に出ることもなかなかできないけどね」


男「だからこうして電話で話しているんだけどね」


女「それも毎日」



男「少しだけ面白い話があるんだ」


女「聞こう」


男「最近のAIの進歩はすごいよね」


女「私たち街から逃げ遅れた人々を気遣ってくれているっぽいよ」


男「それはなんともありがたいことだ。まあそれは置いといて。今日、会話型のAIを買って、試しに会話を試みたんだ」


女「ほう」


男「まず僕は無難に、こんにちわ。と語りかけた。そしたら初期設定のAIはこう返した」


男「『Hello,I’m fine. How about you?』ってね」


女「英語初心者だ」


男「そう。だから、僕は製作者が小学校の教師なんじゃないかと睨んでいる」


女「小学生にこの定型文を教えすぎて、脳に染み付いてしまったのかな」


男「脳に染み付くって、ちょっとディストピアSFものっぽくて良いね」

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