夢恋物語

@ebinnu07

第1話

「あれ、ここは…?」


見覚えのない空港のロビーのような場所。

あ、子供たちが走ってどこかに行っちゃう。

追わなきゃ。


私の日常は子供たちの世話で目まぐるしいほどに忙しい。

家事育児。字面で見ればたった4文字で済まされてしまうのに現実は炊事・洗濯・子供の送迎・ごみ捨て・買い物・備蓄品の補充&点検・ママ友や近所付き合い、その他etc...。


いわゆる名もなき家事とやらを含めるとたった4文字でサクッと片付けられるようなものではない。


そんな日常に身をおいてからもう5年になろうとしてる。

たいした楽しみもない退屈な毎日を送ってる。


え?子供の成長が楽しみだろって?

それはそうなんだけど子供の成長だけで私の人生が満たされることはなく、もし「明日から家事も育児もしなくていい。お金の心配もいらない。やりたいことだけして生きていきなさい」と言われたら私は喜んでその提案を受け入れるだろう。

子供なんかさておいて。


とは言いつつ、目の前の走り去っていく子供をさておくわけには行かないので追いかける。


ふと視界の端に赤い何かがうつった。

視線をそちらに向けると赤色は女性のコートの色でなんとカップルが白昼堂々、人前でキスしてるじゃないですか…。


まあ、この歳になるとキスぐらいでオタオタすることもないんだけど(現に子供もいるし、それ以上のこともしてきたからね)、さすがに場所を考えようよと思ってしまう。


あー、見なきゃ良かった。


そんなことを考えた瞬間、女性の体位がかわり相手の男性の顔が見えて、目が合った。


あっ


相手は私に気づいたのか気づいてないのか分からないけど、私はその顔に見覚えがあった。


大学時代に付き合ってた元カレだった。


お取り込み中みたいだし声をかけるにもかけられる雰囲気じゃない。

でも、ずっと忘れらなかった人だから話したい。

今まで忘れていた感情がとめどなく溢れてくるのを感じた。


話したい。でももう私のことなんて忘れてるよね。

そもそも目が合った気がしただけで向こうはこちらに気づいてないかもしれないし。

でも、こっちを見てる気もする。


なんとなく小さく手を振ってみた。

すると元カレも彼女の腰に回していた手を少し離して手を振り返してくれた。


!!!


やっぱり気づいてくれてたんだ。

私は嬉しさで舞い上がってしまいそうになるのを抑えつつ、ほんの少しだけ彼と見つめあっていた。


もう少しこのままでいたい


そう思った瞬間、目が覚めた。


時刻は午前4時。


隣には旦那と子供が寝息を立てている。


もう元カレはいない。

現実に帰ってきたんだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢恋物語 @ebinnu07

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る