第97話
土曜日が来ても彼は疲れ切っていて、働き始めて数ヶ月の間は休日も夕ご飯の買い物以外外に出ないで二人でお昼寝しながら生活していた。
「咲良どっか行きたいでしょ。どこ行く?」ベッドからゆっくり体を起こした彼が聞いてくる。
「ほら無理しないのそこの旦那さん。疲れてるんでしょ。お出かけなんてこれからいくらでもできるようになるんだから、今日は休もうよ」
「そう言って先週も休んでたじゃん。俺咲良のこと我慢させてる。咲良の行きたいところに一緒に行きたい」
「我慢なんてしてないよ。俊介と一緒にいられたらそれだけで幸せなの。今日はお布団で一緒にいたい。大好きなんだからね、なめてもらっちゃ困るよ」
そう言って着替えようとしていた俊介をベッドに逆戻りさせて二人で布団を被る。
布団に生気を吸われたように彼は一気に癒やされたような顔になった。
抱きついて頭を撫でる。「一週間よく頑張ったね。いいんだよ、また元気な時に一緒にどこにでも行こう。ほら、体こっち」
そう言うと彼は素直に体を預けてきて、背中をゆっくり叩くとすぐに眠りについた。
背中を優しく叩かれるのは二人とも大好きだったらしい。
その寝顔を見て優しく笑いながら頭を撫でて、自分もすり寄って目を閉じた。
大抵の週は起きたらもう夕方で、二人で手を繋いで買い物に出かけた。二人とも食の好みは似ていたので選ぶ物は大抵同じだった。
週末は彼と二人でキッチンに並んで二人で料理して二人で一緒にご飯を食べる。
二人でゆっくりお風呂につかって疲れを癒やして、お互いにマッサージして夜抱きついて眠る。
俊介は毎週申し訳なさそうにしていたが、咲良はそんな平和な日々が大好きだった。
ずっとこれが続いたらいい。そうやってこれからの人生をゆっくりこの人と過ごしていたい。彼が疲れていたら支えになりたい。それが愛する彼にできる最大のことで私がしていたいことだから。
彼にはもう十分なくらい助けになってもらった。今くらい、大変な時くらい傍で一緒にいさせて欲しい。そう思って毎日彼を笑顔で見送った。
毎日欠かさずに彼に「愛してる」と何度も伝えた。
彼からも同じ言葉が返ってくることが嬉しくて、それだけで自分の仕事に足される二人分の家事も頑張れた。
むしろ彼の助けになれていることが嬉しくて、彼の分まで家事をできる立場にいることが嬉しくて気合いが入った。
そうして何ヶ月も経った頃、彼は仕事に慣れてきて「これまで甘えっぱなしでごめんね、今日からは俺ももっと家事するから」と言ってきた。
「私がやりたいの」と少し喧嘩になりかけたが、そんな平和な喧嘩はその日のうちに終わって結局俊介にも甘え始めることになった。
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