第83話
二人とも誕生日は十二月前半だったので、二人の誕生日を合わせてデートした。
その日はもう寒かったので柔らかい赤のニットワンピースにマフラーを合わせてコートを羽織った。
彼もダウンジャケットを着て中に赤のスウェットを着ていて、今日も何を示し合わせたわけでもないのに二人とも赤の物を身につけていてまた笑ってしまった。
昼から一緒に咲良が見たかった恋愛映画を見て、近くのカフェに寄って二人でその映画について話し合った。
「あの彼氏役の人、すっごいかっこよかったけど俊介の方が上だった」
「そんなハードル上げないでよ、主人公の女優さんより咲良の方がかわいかったけど」
「そんなわけないじゃん! 今をときめく引っ張りだこの女優さんだよ?! 目がおかしい、眼科行った方が良い。俊介でもさすがにそれは言い過ぎてる」
「そこまで言うか、咲良の言葉を借りればあの彼氏役の人も引っ張りだこのイケメンだったけど咲良も言い過ぎって事にはならない?」
「ならないよ、あれよりずっと優しくてかっこいいもん。あんなことで喧嘩したりしないもん俊介」
「まあ確かに喧嘩は一回もないね。幸せだね」
その一言で全てまとめられてしまって結局二人で一緒に笑い合った。
夜になってからは二人で予約したお店で、二人分のケーキを食べてお祝いし合った。
プレゼントの交換でもらった口紅は宝物になった。「それが一番似合いそうだったんだ」と嬉しそうにする彼はきっと時間をかけてお店を回ってくれていて、それを想像するだけで嬉しくなった。
彼に渡したのは彼がよく着ていたブランドの黒いマフラー。「私もそれが一番似合いそうだなって思ったの」そう言うと彼も嬉しそうで、バイトを増やしてお金をためた甲斐があったと思った。
二人で歩く帰り道、もう冷たい風が吹いていて、足下には少しだけ雪が落ちていた。
「早速使ってもいい?」と聞く彼にもちろん、と返すと彼はマフラーを巻いてそこに口元を埋める。
「似合ってる、今日の服にも似合う。かっこいい」そう言うと口元が隠れているのに彼がまた嬉しそうに笑ったのが分かって幸せな気持ちになった。
手を繋いで歩く帰り道。送ってもらったはいいものの離れがたくて家の中に招き入れてしまって、その夜は二人きりの夜になった。
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