第82話

夏休みには彼と、三葉と毎日のように会って楽しんだ。


お盆の頃には祖父母の家にも帰った。


ストーキングの経緯はずっと冷静に話せて、「もう大丈夫だよ、ありがとう。その日のうちに連絡できなくてごめんね」と言えた。


二人は「ここにいても良いんだよ、奨学金がだめなら私達の積み立ててきたお金で卒業してもいい。咲良は人よりずっと苦労してきたんだから甘えても良いんだよ」とまで言ってくれた。


それはさすがに遠慮したが二人はそれでも引っ越し費用を用立ててくれたので、その費用で新しいアパートを見つけてそこに住むことになった。


残ったお金は夏休みに入ってしまって少なくなったバイト代の分に割り当てた。


しばらくしてあの男の弁護士から示談の話が来たが全て断った。


聞いたところ、同じような前科もあってそのまま行けば執行猶予なしの実刑判決が下るだろうということだった。部屋番号に関しては管理会社で説明を受けて把握していたらしく、その計画性も重く見られた。


当然のように起訴された男の話をするために裁判所にも出向いてこれまであったことを全て話した。


さすがに消耗した咲良を、三葉も俊介も気遣って一緒にいてくれた。


インドア派だという俊介の家にもその後も何度もお邪魔して、新しくなった家にも何度か迎え入れた。


裁判のある日には必ず予定を空けて着いてきてくれて、手を繋いで帰って来てくれた。


長い時間をかけてやっと咲良にとっては安心する実刑判決が下って、本当の安心できる日が咲良に訪れた。


その裁判に長い時間を費やしてしまって、目標だった自動車免許の取得もできなかった。


それでも、安心できる日が訪れたことを、祖父母も俊介も三葉も、それを知っている人全員が喜んでくれたからそれで良かった。

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