第81話
次の日に来た盗聴器の発見業者の人には「特に問題はありませんね」と言われ、心配する彼に「大丈夫、私ここにいる」と言って自分の家に帰ってきた。
証拠になる紙の束のコピーは俊介が受け取って家に保管しておいてくれることになった。
その日のうちに来ていて返せていなかった祖父母からの心配の連絡にも、「大丈夫だよ、守ってくれる人がいるんだ」と言えた。「何かあったら引っ越しの費用くらいは用立てるからね」と言ってくれた二人のおかげで少し安心できた。
毎日のように朝彼は迎えに来てくれて、三葉と合流できるまで絶対に傍にいてくれた。
三葉と二人で話をした時には三葉も一緒に怖がりながら話を聞いてくれて、それが自分の恐怖心を半分こにしてくれたような気がした。
ただ目が合ったときの話で三葉が叫びそうになったときにはさすがにとっさで口を覆った。それで二人で笑い合った。
どんどん話は進んでいって、彼が助けてくれたことも一緒にいてくれたことも話せた。三葉は「やっぱり俊介さんがいてくれてよかったね。よかった咲良を守ってくれる人がいてくれて」と抱き着いてきた。
最後まで話すと「よく生きててくれたね、本当にありがとう咲良」とまで泣きながら言ってもらった。
奢りで話すつもりが「これくらいさせて欲しい、咲良が頑張って生きててくれたことのお礼くらいしたい」と言って奢ってもらうことになった。
その日は俊介がバイトだったため、相談して代わりに三葉と古川さんが家まで送ってくれた。
二人もいつの間にか自分の知っている二人よりもずっと親密になっていて、「咲良、今度一緒に賢人の試合見に行かない? 前一回行ったんだけどね、すっごい迫力あってかっこいいんだよ」とキラキラした目で話してくれた。
その頭をわしづかみにしながら、「こーら前の試合俺負けたんだからハードル上げんな、三葉の言うかっこいいはレベル低いんだから」と古川さんも幸せそうに言っていた。
家に帰ってからも何もないんだという証明を俊介がしてくれたおかげで前よりずっと安心して過ごせた。それでもカーテンを閉めるその動作は怖くて、毎日外を見ないように目を閉じたままカーテンを閉めた。
怖くなりそうな夜にはなぜか三葉か俊介から電話がかかってきて、二人と寝落ちするまで電話をつなげていれば怖くなかった。
そうして一ヶ月が経つ頃、咲良は自分の家で元通り安心して過ごせるようになっていたし送り迎えも必要なくなっていた。
そこで夏休みが始まった。
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