第62話
その紙を開く度にガタガタと体が震えていくのを感じた。
全て最初に三丸八号室の高橋さんへ、と書いてある。どの手紙を開いても筆跡は同じだった。
あなたは綺麗だ、あなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だあなたは綺麗だ……
君は僕のことが好きだ、君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ君は僕のことが好きだ……
その字を書くだけにどれだけの時間を使ったんだろうと思って目眩がした。それほどの狂気をもってこの手紙は書かれている。
そういうただの言葉の羅列はまだマシな方だと後半になるにつれて思うようになった。
僕はずっとずっとあなたのことを見てきました。この気持ちは間違いなくあなたへのものです。愛しています。僕こそがあなたの隣にふさわしい存在です。あの一時期一緒にいた男とは別れたんでしょう、正しい選択だ。僕の魅力に気付いたんでしょう。僕のことを愛しているんでしょう。僕と結婚して幸せな家庭を築きましょう。僕はずっとあなたのことを見ています。これからもずっと見ています。そしてあなたも僕のことをこれからずっと見ていてくれるんでしょう。結婚しよう、そして子どもを作って三人で幸せになろう。結婚しましょう、結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう結婚しましょう……
これを書いてきたってことは私と俊介君が一緒に家を出ていたことを、家に帰ってきていたことをずっと知っていたということだ。
どこかで見ていたということだ。どこでかは分からない、でもきっと駅までは来なかったんだろう。
それでも私達二人とも気付かないように私のことを一ヶ月以上見ていたって、こと、で、そんなことって。
そんな内容ばかりだった手紙も最後の一枚になった。それを開いてまた体が震えていくのを感じた。
今度会いに行きますね。外か家か、どこかは分からないけどきっとあなたは僕のことを受け入れてくれるから。会いに行く、会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く会いに行く……
会いに、来る……? そんな、こと、されたら、どうしよう怖い。
もしかしてあの人、それしか考えられないけどまだ分からない。もし違う人だったらもう会いに来られたとしても気づけない。
どうしよう。助けて欲しい。外に出たくない。
俊介く……ああもうバイトの時間になる。行かなきゃいけない。
それに、今日俊介君お友達と会う日って聞いてる。邪魔したくない。一日くらい、きっと大丈夫。
「今度会いに行く」って書いてあるんだからきっと今日は来ない。そうであって欲しい。できることならずっと来ないで欲しい。
できるなら破って捨てたい、でもこれは証拠になる。捨てちゃいけない。
どうしよう、でもバイトの時間ももうギリギリだ。……仕方ない、後で連絡しよう。それでバイト帰りに警察に寄ろう。
そう思って咲良はいつもの格好に着替えて、見たくもない紙の束とこれまでの記録を書いた紙をバッグに詰め込んで雨の中歩いてバイト先に向かった。
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