第59話

帰ってから余韻に浸りながらいつもの洋服に着替えて、髪も一つにまとめてスニーカーを履いてバイトに向かった。


俊介君にはアルバムを作って今日の写真を共有。三葉には「最高だった、もっと好きになっちゃった」とだけ送っておく。


晴れている中自転車をこぐと風が気持ちよくて、そのままバイト先について自転車を店の裏に停めた。


三葉から「月曜になったら絶対どんなだったか聞く」とメッセージが来ていて何を話そうかと今日あったことを一つ一つ思い出してまた嬉しくなった。


俊介君との画面を見てみるとあちらからも写真が共有されていた。


自分が撮った写真は海の生き物のものばかり。それなのに彼から送られてきた写真と言ったら半分はそれを見ている咲良の写真だった。


「自分の方が好きに決まってる」それを否定してくれたことを思い出す。


私すごい好きでいてもらえてるって、思っていいのかな。


また嬉しくなってその日のバイトは気合いが入った。あの人ももう来ない、大事にされてる、三葉に話したいことだってたくさんある。


今日のバイトだって終わったら俊介君と話したいこといっぱいある。


私のこと見ててくれて嬉しかったって……あ、手紙渡すの忘れた?! ああ、また今度にするか。


今日でありがとうしたいこと増えたからそのことも書き足してから渡したい。


期待でいっぱいになってその日のバイトは二割増し力が入った。


「高橋さん今日仕事速いね、なんかあった?」


「今日良いことあったしバイトの後にも良いことある予定なんです、どんどん回してください」


「頼れるなあ、あれからあのお客さんも来てないし高橋さんが無事なままで良かったよ」


「そこまで気にかけていただいてありがとうございます」そう言いながらビールジョッキをさっさと運び終えて会計に向かった。


今日の私最強な気がする。お客さんもそんなに酔ってる人いないし怒鳴ってくるような人もいない。


「ありがとうございましたー」そう声をかけてからまた戻って手を洗ってから料理を運ぶ。


「高橋さん、今日お客さんも大分少なくなってきたしあがっていいよ。いつも通りの時間働いたことにしとくから残り時間でまかない食べて帰りな」


「ありがとうございます!」


今日のバイトやっぱり最高。ご飯食べたら俊介君に電話しながら帰ろう。そう思ってまかないを堪能してからバイト先を出た。


いつもの番号にメッセージを入れて電話しても良いか確認してから電話する。


「夜遅くなっちゃってごめんね、バイト今日は頑張れたから早めに上がらせてもらったの! 今日の写真、私の撮ってくれてて嬉しかった。私も俊介君の写真撮れば良かったな、ごめんね」


「バイトお疲れ様。いいよそんなの。俺が撮りたかったの、かわいかったから。今度から二人で一緒に撮ろうか」


「それいいね、一緒に写真増やしていきたい」


「とりあえずは来週の大会で俺のフォルダに咲良ちゃんが増えるね」


楽しみにしてくれるんだ。絶対私これまでのベストタイム出したい。かっこいいところ見せたい。明日から絶対個人練習する。そう決めてその日は電話を切ってから気合いを入れて眠りについた。

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