第47話

「もしもし、俊介です。咲良ちゃんどうしたの?」


「俊介君、今時間とかって、」


「大丈夫だよ。一人暮らしだし特に予定もないから。課題もないし。何かあった? 声に元気ない」


あ、私課題片付けなきゃいけないんだった。でもそんなの、今怖くて手に付かない。


「あの、実は、えっと、」


「大丈夫だよ、咲良ちゃん落ち着いて。時間あるし何でも聞く。言ったことの内容で嫌ったりしない」


私の考えてることはこの人には筒抜けてるのかな。嫌われないか心配だったことまで見抜かれた。嫌われ、ないんだ。じゃあ。


「あのね、居酒屋さんでバイトしてるって言ったと思うんだけど、今日そこで九時までバイトしてたの。


細い道歩いてたんだけど傘忘れたのに気付いて戻ろうとしたら常連さんとすれ違って。


たまたまだと思ってたんだけど、さっき家に帰ってきてカーテン閉めようとしたらその人が、外にいて、目が合いそうになってとっさに閉めちゃって。


もしかしたら家まで付いてきたのかもしれないと思うと怖くて、オートロックもあるけど中から出てくる人待ってたら入れちゃうし。まだ外にいるのかも怖くて見られなくて、明日からどうしようって、思って、」



途切れ途切れになりながらも自分から話せることは全て話した。口を挟まず最後まで相づちを打ちながら聞いてくれるその声に段々緊張が解けて涙が出てきた。



「咲良ちゃん、大丈夫。相談してくれてありがとう。怖かったね。ちょっと待ってね……そっか


……ストーカーって『止めて欲しい』って伝えても何度もつきまとってくる場合にしか警察は動けないみたい。


でもまずは今教えてくれたこと、一回メモ取ろうか。日付とあったことね。


……で、良ければなんだけどそれ書いてる間に電話つなげっぱなしで俺がそっちに行く。怖いでしょ一人でいるの。


嫌だったら良いけど、女の子呼んでなんかあったらそれも嫌だし。俺からは絶対何もしない、誓う。どうかな」



「来て、ほしい。ごめんなさいこんな夜中に迷惑かけて、」


「迷惑じゃないよ、咲良ちゃんに頼ってもらえる立場でいられて良かった。家の場所覚えてるから今から行くからね。


外にそれっぽい人がいないかも確認するしオートロックも電話越しの声と同じかどうか確認してから開けてくれれば良い。


ただ部屋番号だけは聞かれるの怖いからメッセージ打っといてくれるといいかな。思い出すの嫌だろうけどその人の体格とか顔の雰囲気とか特徴もあったらメモしとこう。


俺電話つなげたままでいるからね、大丈夫だよ」

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