第45話
バイト先に少し早めに着いた咲良はそのまま早めに仕事に入った。まだ今はお客さんは少ないけど夜になればもう少し増えてくる。
金曜の夜なんて一番忙しいところを休ませてもらったんだ、その分の働きくらいはしないといけない。
夜になれば時給も上がるからそこでがっつり稼いで、まかない食べて夕ご飯の分も節約。今多少冷凍食品に頼れているのだって夜からのバイトで稼げているからだ。
ここのバイトができなくなると結構痛い。他の店よりもまだ治安の良い店を選んだつもりなんだから。
エプロンを着けてTシャツの袖を少しまくりながらそんなことを考える。
実際夜になってみれば家族客や飲みに来た客で忙しくなってきて、バイトを大学入学前から始めていた咲良は接客に会計にと忙しく店内を歩き回った。
バイト終わりのまかないも今日は少し質素でちょっと残念な気分になりながらも、自分で作るよりもおいしいからいい、と思って平らげた。
九時を過ぎた頃に八時間超のバイトが終わって咲良は店を出た。
雨はバイトの途中に降り終わったらしく、もうその頃には雲もあまりなかった。その分居酒屋外は賑わっていて、咲良はできる限り声をかけられないように歩いて小道に入った。
キャッチに引っかかるとしばらく時間を取られて面倒なことになるし、まだ終わってない今日の深夜までの課題もある。
スマホを開けばすごい量のメッセージが来ていて、三葉からのものだろうなと思ってアプリを開いた。
その予感は的中で、三葉から読み終わるのにすら時間がかかりそうなほどメッセージが送られてきていた。それに目を通しながら小道を歩き続ける。
しばらく家に向かって歩いて、自分が傘をバイト先に忘れてきたことに気付いた。明日のバイトの時で良いか、と思うも天気予報を見てみれば明日は一日雨予報。
仕方ない、面倒だけど戻るか。そう思ってくるっと振り向いて元の道を戻った。少し歩いてきたところで一人の男の人とすれ違った。
あれ、この人どこかで見たことある。……あ、うちの常連さんだ。確か声かけられたこともある。大抵一人で来てる人だ。
別にしつこくはなかったし「接客がいいね」なんてにこやかに言ってくれた人だったから別になんとも思ってなかった。でもこんな道まで同じになることあるか?
殆どの客はそのまま大通りにある電車に乗って帰って行く。まさか付いてきたとか……。
そう思って振り返ってみたがその男性はそのままその道を進んでもう殆ど見えなくなったいた。なんだ、勘違いか。
普通に私と家の方面近いだけだな、良かったー家まで付いてこられてるとかじゃなくて。そう思って傘を持って今度こそ家に着いた。
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