第38話

「なんかすごい慣れてるって言ったら悪いかもしれないけど、完璧超人って感じです。話し方とかも絶妙に距離詰めてきて。最初も告白してもらっちゃったし、連絡も時間考えてくれてるのが伝わってきてて優しいなあって」


「咲良ちゃんそんなこと思ってたの」と言われてそっちを見ると少し赤い顔をしたその人と目線がバチッと合って、こっちまで恥ずかしくなってもう一度古川さんに目線を戻した。


「完璧超人か、確かに。こいつ器用だから何でもできちゃうんですよね。高校でも成績当然のようにトップ取ってて、模試とかも全部判定良くて。


性格まで良くて男友達もかなりいたけどあんまり下世話な話はしないタイプだったかな。でも以外と彼女は高校の頃はいなかったですよ。モテてたのに告白まで全部断って。慣れてるって程じゃないから天然でこれです。羨ましい。


だから今回一目惚れで自分から告白したって聞いて大分びっくりしました。でも咲良さんみたいな人なら納得」


「ちょっと人の彼女になりかけてる子口説くなよ、今まだこの子引き返せちゃうんだから」


ここまで全て完璧、もうこんなの彼氏にしない方がおかしい。まだ私が引き返せる余地まで残してくれてる。

女の子との付き合い方も聞きたいところだったけど思ってたより硬派なのかな。


「ごめんて、口説いてないわ。……で、意外なところに弱点があるんですけどそういうとこは多分聞きたいですよね」


「すごい興味あります、この人にできないことが今のところ見当たらなくて。私にあまりにもつりあわなくて」


「それが意外なことに実は芸術系からっきしで。俊介鉄板のやらかしネタが唯一そこなんですよ。俊介、高二の時の音楽と美術の成績は?」


「……二」


「うそ」


「いやそれがほんとのことで。しかも本来なら一だったところなんとか先生に頼み込んで筆記試験してもらってかわいげもなく満点取って。


要するにお情けで二もらったんですよ。だからこいつ危うく高校で留年するところで」


「えーそんなの全然見えない、そんな弱点あるなんてやっぱり神様は多少は平等なんですね」


「確かに、咲良さん面白いっすね。あとはそうだな、あんまり聞きたい話じゃないかもしれないけど、中学の頃には彼女いたみたいですよ。


それも重くはないけど一途に想い続けて大事にしてたのに浮気されて振られたらしくて。それで高校の頃は封印してたのかなって感じ」


中学の恋愛なんてちょうど良い情報にしかならない。初めてが良いなんて言ってられるような相手じゃないしこっちも初めての彼氏でもないし。

重いわけじゃないことまで聞ければもう私としては引き返したくない。


決めた。

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