第35話

その週の金曜日の放課後に、四人で会うことに決まった。三葉と先に合流すれば三葉はいつものTシャツにジーンズではなく綺麗めなワンピースを着てきていた。


「あまりにも気合い入りすぎでしょ、合コンじゃないんだから三葉」


「いや、医学部生との一対一の合コンみたいなもんだからこれでいいの。咲良、いいね? 私は普段から女の子らしい服ばっかりだしおしとやか」


「いやそんな付き合い始める前にでもぼろがでそうな設定止めときなよ、三葉普通にさっぱりしてるところが良いのにおしとやかさ出したら三葉のタイプじゃ絶対続かないから。私が断言する」


「えぇ……いつものままの私でも大丈夫? 医学部生おしとやか看護学部系女子好きそうじゃない?」


「理学部の時点でアウトだから諦めて、ガリ勉のイメージただでさえ強いから。大丈夫三葉の根の良さは私も分かってるし初対面でも伝わるし。必要なら援護するから」


「咲良彼氏がいる余裕見せやがって……でも頼るわ、任せた」


「任された」


そのまま二人で歩いていつも女子会で使うのとは違うカフェに着いた。


いつもは安く長くいられることが最重要だが、今回に関しては雰囲気が良いことを優先していつもよりも少しドリンクの値段が高めの店をこっちから指定していた。


予定していた時間よりも少し早く着いたつもりが高橋さんはもう到着していて、カフェの外の壁にもたれかかって時々周りを見回しながら待っていた。


こんなところでスマホを開かないところまで好みだ、ああもうこの人は私の好みを的確に刺してくる。


そう思いながら近づくと声をかける前にその人は気付いて手を振ってきた。今日は緩めのセットアップか、センスまで好み。


「ごめんね咲良ちゃん、三葉さん。俺の友達まだ来てなくて、もうちょっとで着くと思うんだけど」


名前を呼び変えていることまで分かって余計に目の前の人に意識が向いた。


「全然大丈夫です、私達もさっき合流したばっかりだしまだ時間になってもないし。俊介君今日はありがとう」


「俊介さん、今日はありがとうございます。私ただあの場にいただけなのにお友達の紹介までしてもらっちゃって」


「いえいえ。これから来る友達、高校から一緒で同い年の良いやつだから期待しててやって。そんなこと言うとあいつが怒るかもしれないけど。咲良ちゃんも俺のことどんなやつか聞きたいかなとか、……これは自意識過剰な上に余計なお世話か」


うわ、そこまで読まれてたか。なんだこの完璧超人。弱点はどこだ。


「いや、実は私も俊介君がどんな人か聞こうかなって思ってて。なんか見透かされてたみたいで恥ずかしいけど。俊介君本人と話したかったのももちろんで。でもお友達からもお話聞けたらいいなって思ってたから、正直ありがたいです」


その言葉に俊介君はふわっと笑って「良かった。俺のこともっと知ってください」と返してきた。好青年が過ぎるな、人生何週目だ? と思いながらもこちらも笑顔で返しておいた。


もちろん隣では野次馬モードに入った三葉がこっちを眺めている。



しばらくして「あ、来た」と声がしてそのお友達が到着した。

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