第33話
一旦家に帰ってからもう一度バイト先に向かう。
夕方からの居酒屋バイトにしたのはなんと言ってもまかないが出るからだった。多少の治安の悪さには目をつむったし、祖母も特に何も言ってこなかったので夜の時給が高くなる時間は咲良にとって最高の稼ぎ時だった。
接客をしていても、今日は頭の中はまかないでいっぱいだった。
授業も受けたし女子会もした。知らない男子から告白までされて散々三葉にもからかわれてきたんだから、それは当然のような物だった。
今日はまかないなんだろう。マグロ今日余ってるから海鮮丼とかにしてもらえたら最高。
そう思いながらも大学入学前からバイトしていた咲良は会計も配膳も普通にこなしていた。
両親以外のことでは咲良は元々メンタルも強かったのでどんな客が来ても平気だった。怒鳴りつけて来る客がいても、この人の対応してるだけで時給出るの最高すぎる、はー早くまかない食べたい、おなか空いた。としか思っていなかった。
その日のまかないは狙ったとおり余った刺身の海鮮丼で、もうおなかの空ききった咲良は十五分でそれを食べきってご機嫌で家に帰っていた。
暗闇になった中でふとスマホを開くと今日交換したばかりの高橋さんから連絡が来ていた。
「高橋です。今日はいきなりすみませんでした。何も自己紹介もできなかったんだけど、医学部医学科の一年生です。あんな言い方じゃどうすればいいか分からないだろうと思って連絡しました。さっきも言った通り、高橋さんに一目惚れしました。付き合ってもらえませんか」
あまりに直球過ぎるそのメッセージに呆れを通り越して好感を持った。なんだこの面白い人。
私もさっき告白に応えたようなものだし、こんな面白い人ならより関わってみたくなっちゃうじゃん。
「高橋です。今日は驚いたけどわざわざ声をかけてくれてありがとうございました。私は理学部の一年生です。私で良かったらお付き合い、よろしくお願いします。
名字同じなので良かったら咲良って呼んでください、浪人してたら私敬語使いますけどタメ口で大丈夫です」
こんなやりとりしてるの三葉が知ったらまたすごい勢いで騒ぎ出すんだろうな。面白いって、かっこいいって思っちゃったんだからしょうがない。
私この人にすごい今興味ある。もっとこの人の事知りたい。
彼氏だって別れたのも最近の話じゃないし、彼氏になってくれるならこんな素敵そうな人もいないし。お互い嫌になったら別れればそれで終わりだし。
あんなイケメンの高学歴の人の彼女に、それでこんなに面白そうな人の彼女に人生で一回くらい、なってみたい。
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