第24話
それから咲良は毎日病院に通いながら、それでももらった薬を飲んで食べて寝るようになった。段々とメイクをする必要もなくなった。
親が病であることを認めただけで親が死ぬことなど絶対に認めない、そう思いながら学校に毎日通って行かなかった日を埋めるように遅れた授業にもかじりついた。
先生に分からなかったことを授業後すぐに聞きに行く様子を見て、教師も周りの友人も何が起きたんだという顔をしていた。それでもそれを止めなかった。
うちは今皆で闘ってるんだ、お母さんもお父さんも必死に生きるために踏ん張ってるんだ。私だって自分の人生の中で闘うことならできる。
いつか二人が帰ってきた時、国公立の大学に通える自分になりたい。どこの大学でもいい、でも私は大学生になるんだ。
その時二人が余裕を持って治療費も学費も考えられるようになる。奨学金をもらったって良いけどそれだって成績が良ければ良いだけ良いことだ。それが唯一二人にできることだと思った。
周りの目なんてもんどうだっていい。元々ノリでつるんでいたような友人だ。あなたたちのことは好きだけど愛してはいない。本当は大事にしたい、でも今の私にそんな余裕はない。手の中にいる両親を離さないことで精一杯だ。だから、申し訳ないけど愛してる家族の方が優先だ。いつかまた会えるときが来たらその時に大事にさせてくれ。
毎日病院に行って、日に日に弱っていく両親を見ながらそれでも「愛してる」と伝え続けた。泣く日があっても両親ともそれを許してくれた。
だから全て取り繕うのは辞めて、咲良は必死で生きた。
家に帰ってからは毎日ノートに書き殴った。
お父さんもお母さんも無事に帰ってくる。絶対に帰ってくる。癌なんかに負けたりしない。だから、良くなってくれ。二人は、良くなる。
二人は、良くなる。二人は、良くなる。二人は、良くなる。二人は、良くなる。二人は、良くなる。二人は、良くなる。二人は、良くなる。二人は、良くなる。二人は、良くなる。
見つめてみれば狂ったような文字列に自分でも目眩がした。それでも毎日同じようなことを書き続けて両親の無事を、一刻も早い回復を祈った。
一人で毎日のように三人分の夕食を作って並べて、それでも二人が帰ってこないことを確認して三人分詰め込んだ。
毎日のハードスケジュールに疲れて眠りについた。
体重も元に戻っていつの間にか咲良自身は健康体そのものになっていた。
それだけ必死に全員が闘っていても、咲良が自分の人生の中で勝つと思っていても、そして咲良がそれをできていても、咲良以外はそうではなかった。
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