第21話
次の朝いつも通りの時間に起きても両親はいなかった。
あれ、なんでだろう。二人とも昨日はいてくれたのに。あ、そっか。今日は検診か何かで二人とも病院に行ってるんだったっけ。私も行く準備しなきゃ。学校は今日は休みの連絡入れなきゃだ。
「もしもし、二年四組の高橋です。今日は病院に行くので欠席します」
「そういう連絡はご両親にしてもらわないといけないんだけど。……高橋聞いてる?」
「ああ、聞いてます。両親も今日病院でもう家を出ちゃったんです。病院に行ったので電話も検査が終わるまで通じません。なので休むことだけ伝えさせてください」
「高橋最近注意されることばっかりしてるけど今日は本当に病院なのか?」
「病院ですよ、近くの総合病院です。なんなら明日先生に検査結果の紙渡します」
「……ならいい、気をつけて行ってきな。次メイクして学校来たらまた取り上げるからな。それから親御さんにも次回からは連絡を頼むように」
「はぁい、では失礼します」
制服を脱いで普段着に着替える。検査するなら楽な服の方がいっか、まあこれでいいや。
そう思っていつもの病院に十時頃に到着した。
「面会ですか?」いつもの受付の人にはもう顔を覚えられていた。
「面会? 今日は家族と一緒に検査があるので来ました。両親はもう来てますよね? 私はどこに行ったらいいですか?」
「えっと……高橋さんに今日検査はないはずなんですが」
「でも昨日両親が家で言ってくれました、今日は病院で検査の日だって」
「……分かりました、少しお待ちください」
しばらくして通されたのはいつもと違う精神科の診察室だった。
「あの、今日両親と検査があるはずなんですけどなんでここなんですか」
その様子を見て医師はゆっくり言った。
「高橋さん、あなたのご両親は三ヶ月前からこの病院に入院しています。お二人とも肺癌です。昨日主治医からその説明は受けたと聞いています」
「いや、でも昨日両親と森みたいなところで話してて、二人とも元気だったんです」
「高橋さんは今幻覚を見ています。信じがたいことから心を守るために脳があなたに幻覚を見せている。その顔つきからしても食事や睡眠も十分ではないでしょう。ご両親の担当医には伝えておきますので今週いっぱいは今から処方する薬を飲んでしっかり休んでください」
この人何言ってるんだろう。幻覚だったのは二人が癌になることだったはずなのに先生もそれを見てるの? 二人には結局今日は会えないって事?
なら仕方ないか、検査入院だもんね今日二人とも。私に薬なんて要らないけどまあ二人が心配するから飲んでおこう。
その日咲良はそのまま家に帰って学校に電話を入れて、朝と同じように両親から電話しろと怒られてから薬を飲んで眠りについた。
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