第12話
「……え、そんな、」
告げられた言葉は信じがたいものだった。目の前の医師は淡々と言った。
「咲良さんのご両親は二人とも肺癌のステージ三です。お父さんの方が若干病状が良くありません。これから抗がん剤での治療が始まることになります。お二人ともそれを了承されました」
肺炎じゃなくて肺癌……? じゃあもう二人はこれまでみたいに一週間で家に帰ってきてくれなくなる。
それにもう二人はそれを聞いているって、それを了承したって言うの。
それにステージ三なんて、末期なんじゃ、なんで、こんなに病院に何度も行って入院もしてたのにそんなになるまで気付いてくれなかったの。確かにここ一年強は二人とも何もなく元気にしてたけど。
二人は生きててくれるはずなのにステージ三ってそれってもしかしたら長く生きていられないんじゃないの。
その考えをなんとか封じ込めて聞いた。
「両親は、大丈夫なんでしょうか。私は癌についての知識が全くありません。ステージ三がどれほどの物なのかも全く想像が付きません。申し訳ありませんがもう少し説明をお願いしても良いですか」
当然のように医師はゆっくりと説明してくれた。私が知っている癌は確かステージ四まである。三ならまだ、まだ生きていけるかもしれない。
四だって生きていける人もいるのかもしれない。でもそれすら分からない。それくらいに私は無知だ。そう思ってスマホを開いてメモ帳に書く準備をした。
「肺癌は癌の中でも死亡する患者さんが男女合計して最も多い癌になります、肺癌のステージ三の状態は、癌が肺の中・外ともに他のリンパ節に転移している状況です。
ステージが一や二の場合だと外科手術で癌だけを取り除くことができます。ですがステージが三以上になると転移のためにそれができません。
なので放射線治療と化学療法で癌を小さくしてから、つまりステージが一か二になってから手術を行うことになります。この化学療法というのが抗がん剤のことです。
そしてその治療方針にご両親が同意されたということになります」
転移してるって……癌のことなんて何も知らないけど、転移するまでが大切な物だと思ってたのにもう肺の外まで転移してるって事なの?
しかも手術もできない状態なんてそんなこと、……でも今目の前の先生は癌を小さくしてから手術するって言ってくれた。
それなら、それができれば二人も長く生きていけるってことだ。きっとそう。
そう願っていた咲良にとって次の言葉は衝撃的だった。
「五年生存率と言って、癌と診断を受けてから五年後に生存している割合を示すものがあります。肺癌の五年生存率はステージ三で二十三.二パーセントです。お父さんは煙草も吸われていたそうですので、その分多少悪化が早いのかもしれません」
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