第10話
その当たって欲しくなかった予感は当たってしまった。
週末に病院から帰ってきた二人は「軽い肺炎だそうだ、咲良、心配させて、その心配を聞いてやらなくてすまなかった。もっと早く病院に行くべきだった。悪いがこれから入院の準備をしてまた一週間くらい入院してくる。それまでまた、待っててくれるか」
「当たり前じゃん、”愛してる”んだから。謝らなくって良いよ、むしろただの心配だったのを聞いてくれてありがとう。待ってるに決まってるよ。残念だけど早く分かって良かった。二人の病気が悪くなる前で良かった。入院の準備、私がするから二人は座ってゆっくりしてて。持ってく物は前回と一緒でしょ? 二人は病人なんだから病人らしくしててください」
「それくらいできるからいいよ、さすがに咲良にそこまでさせられないよ」
「そんなこと言われても私が心配なの。どうするの準備始めてからまたあの日みたいに咳し始めたら。救急車呼ぶのだって他の人の分時間使ってもらうことになるかもしれないんだからとりあえず座ってて」
「咲良に病院に行けって言われてこの結果だったからもう頭が上がらないなあ。分かったよ、ママと一緒にコーヒー飲んでるからちょっとだけ準備お願いする。それ終わったらさすがに僕らも準備始めるからそれまでの間だけで良いよ、十分助かるから。ママも少し休もうか」
そう言って荷物を置いて少し休み始めた二人を横目に、コーヒー飲んでる間に準備終わらせてやる、と思いながら準備を始めた。
持っていくものは前回と同じだし前回入院してから三ヶ月も経っていないから荷物も少しまとまっている。必要なのはとりあえず洋服一式とお風呂関係のもの。
それだけあればあとは売店で二人とも好きなように買って使うだろう。二人分の荷物を分けて詰めていく。さすがに夫婦と言っても男女は別部屋になるだろうし袋は二つ。
お母さんの荷物の方にはメイク落としと髪留めも入れて、お父さんの方にはひげ剃りと充電器。
二人とも多分バッグの中に必需品は入っているからその辺は考えなくていいし、前回の入院で買った二人分の入浴用の物とドライシャンプーもある。
……こんなもんか。あとは二人に好きなように病院で洗濯してもらうことにして、必要な物があればまた電話でもしてくれれば持って行ける。
目標通り二人がコーヒーを飲み終わる前に準備はあらかた終わっていた。
さすがに両親の入院の準備なんて慣れたくもない、これが最後になってくれるのを願うしかない。でも今回はもう入院するって決まったんだから。これが最後だと思ってやりきったんだ。最後であってくれ。
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