第3話
咲良はそのまま両親からの愛に恵まれて中学生になって高校生になった。さっぱりしたような性格で友人にも恋人にも恵まれていたが、家族とは輪をかけて仲が良かった。
二人に大事にされていることを分かっていたからか、反抗期も殆どなかった。
両親に聞いてみても「無かったような気がするなあ、咲良は毎日学校であったことも友達との事も教えてくれたしね。ママどう思う?」
「なかったと思うなあ、私に向かって暴言吐くこともなかったし毎年一緒に初詣も行ってくれるし。パパは小さい頃の初詣でもう『パパ嫌い』って言って来てくれなくなるんじゃないかって心配してたもんね。そんなこともなかったね」
「ああ確かに心配してた。中学生くらいになったら一緒は無理かと思ってたけど乗り越えたな。でもこれからも咲良からその言葉が出てこないことを祈ってるよ。そんなこと言われた日には会社クビになったのと同じくらい、いやそれよれよりもダメージが来る」
それにはさすがに反論した。
「今更パパ嫌いなんて子どもっぽいこと言わないよ、信頼ないなあ。私二人の事大好きだし、二十歳になったらまずは二人とお酒飲みたいなって思ってるのに」
「ママどうする、僕ら愛されてるよ」
あ、これが愛してるってこと、なのか? 確かに家族の二人のことは友達とも彼氏とも違うなんて言ったらいいのかよく分からないような気持ちでいる。
これが、この不思議な気持ちが、”愛してる”ってこと? まあそうかもしれない。
彼氏のことだって、まあこれはお父さんに言ったらショック死しそうだから言ってないけど、大好きだしもう少し一緒にいたいなあって離れ際いつも思う。
でもなんかこれはそれとは違う気がするかも、しれない。だってもう少しどころか死ぬまで一緒にいて欲しいし二人のどっちかが認知症にでもなって自分のことを忘れたりなんかしたら本気で泣ける自信がある。
この気持ちがそうなら、”いつまでもあると思うな親と金”とか言うし、恥ずかしいけど伝えたら二人とも喜ぶかなあ。やっと今さっき自覚したような気持ちだしなんか背伸びしすぎな気もするけど、まあ笑われたら笑われたでそれでいっか。大人になったときの笑い話って事で。
「……愛してるよ、二人のこと。背伸びしすぎかもしれないけど」
いややっぱ言葉にするとさすがに恥ずかし……って二人とも胸押さえてまで何をそんな……って泣いた?!
「ママ今の聞いたか? 咲良が僕らのこと愛してるって言ったよ、なんだか本気で胸が痛くなるような気がする」
「聞いたよパパ、私もなんだか本気で嬉しすぎて死んじゃいそう」
「大げさなんだからまったく、愛してるの五文字で人が死ぬわけがないでしょうが。二人とも大人になっても小さい赤ちゃんみたいに私のこと溺愛するんだから」
それでも泣くほど喜ぶなら毎日伝えてあげたら喜んでくれるかな、と思って少し嬉しくなった。
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