第85話

次の日は聡君の面談と花菜ちゃんの面談が入っていた。普段通りに授業を終わらせて二人と一緒にご家族を待つ。


二人の家族が到着したところでまずは聡君との面談に入った。


聡君にはお母さんが着いてきた。「よろしくお願いいたします」とお互いに頭を下げる。




「聡さんは片麻痺とのことですが、左手での筆記は充分にできています。


男子児童がもう一人いたのですが家庭の都合で転校することになってしまい、この一年間は女の子に囲まれての生活になりました。


それでも輪の中から外れることなくいつも楽しそうに遊んでいらっしゃいます。


勉強の面でも頑張っていらっしゃるので、皆がつまずくところで他の子に教えてあげたりする様子も見受けられました。


ご家庭ではどのように過ごされているでしょうか」



「一年生の最初の方に一度だけ学校に行きたくないと言いだした時期があったので心配していたのですが、それ以降は楽しそうに学校に通うようになりました。


転校した子の話も他の子の話も良く聞いています。


右手でも多少は使えるように家族で練習させていますが、左手での筆記に関しては先生のご指導と支援がなければ厳しいこともあったかと思います。


本当にありがとうございました。それから避難訓練の時にも助けていただいたようでとても助かりました。


最近までは外からのサイレンの音で調子を悪くすることもあったのですが、最近サイレンを聞いても大丈夫になってきました。


先生から大丈夫になると言ってもらえて自信がついたようです。ありがとございます」



「そうですか、それは何よりです。聡さんサイレン大丈夫になったんだね」



「うん、最近は聞いても苦しくないしかっこいい音だって思えるようになった! 来年の避難訓練の時はもう大丈夫だと思う!」



聡君は嬉しそうにしていて、夢に向かうための準備が少しずつ進んでいると思うと嬉しくなった。



「将来消防士になりたいとのことで、来年から私は担任を離れてしまうのですが最大限に応援させていただきます。


聡さんはご自分で夢を諦めずに他の障害を持つ人の目標になれるかも知れないと希望を持って頑張っていますので、これからもご家庭での支援もよろしくお願いいたします。何か気になることはありますでしょうか」



「この子が来年度から他の男の子との関わりがないままになってしまうことに多少家族で心配しています。その点に関してはどのようになるでしょうか」



「そうですね、転校して来る子がいない限りは基本的に特別支援級での授業が一般的にはなってきます。


ただ運動会の前には自分のクラスに戻っての練習になるので、一年間を通して全く交流がないというわけではありません。


それでも心配なようでしたら、学校に併設されています学童をお使いになられるのも一つの手かと思います。


地域でのスポーツクラブなども交流の場にはなると思いますが、いちばん身近で使いやすいのは学童ではないでしょうか。


必要であれば聡さんの障害についてもこちらから説明することは可能ですし、共働きの子が多くいますので男女関係なく関わりを持てる場になると思います」



「学童ですか。私は専業主婦なのですがそれでも利用可能でしょうか」



「もちろんです。よろしければお帰りの際に学童の様子を見ていただけると良いかもしれません。体育館に向かう廊下の教務室手前に学童がございます。


……聡さん、お母さんを一緒に連れて行ってあげられるかな?」


うん、と返ってきて、お母さんからも様子を見させていただきたい、と返ってきた。



「必要であれば中にいる職員にお声がけください。料金について少しお話しができると思います。


基本的に学校が閉まる七時前位までは開いていますのでぜひご利用ください。あとは何かご心配な点はありませんでしょうか」


それには大丈夫です、ありがとうございましたと返ってきて聡君との面談が無事に終わった。

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