最後の時期に、

第81話

空気はどんどん冷たくなっていって、雪が積もる一月の半ばになった。


聡君は雪の中を半袖短パンで登校してきていて、見ているこっちの方が寒くなる。


冬休みをかけて一ヶ月ほどでちょうど美咲ちゃんが怪我を治して、無事に右手が使えるようになっていた。


女の子皆から「聡君そんな服で寒くないのー?」と聞かれては「全然寒くないよ」と答えていて、自分の小学生時代にもこんな子いたなあ、と思い出す。


皆もいつも通りに授業を受けていて、休み時間も皆で一緒に遊んでいる。もう楓ちゃんが話さないことを誰も気に留めていなくて、必要な時には皆で筆談をしていた。

その姿に以前楓ちゃんが話しかけてもらえなくて辛そうにしていたのを思い出して嬉しくなる。


その日は皆で生活の時間を使って雪で遊びに校庭に出た。


「皆さん危ないので屋根の下には近づかないでください、雪の下敷きになると死んじゃう可能性があります」その声にまたいつもの返事が返ってくる。


皆で雪合戦をして、雪だるまを作って、雪の重みで折れた枝を挿して手を作る。皆で雪の中から石ころを掘り出してきて目と鼻を作った。


「口がないねえ」と皆で言い合って、結局指で口の形にくぼみを作る。


「できた!」と嬉しそうな皆の姿を写真に収めて、皆で同じ道を通りながら教室に戻った。


さすがに外での長時間の遊びは寒かったらしく、聡君がくしゃみをし始めた。


「ほらやっぱり寒いんじゃん」と言いながら皆で聡君をからかって、そのまま授業を受けた。


次の日聡君は風邪を引いて学校を休んで、聡君が戻ってきた頃には今度はインフエンザが三人出て学級閉鎖になった。


美菜実も児童からもらってしまったらしく、大人になってかなりきつくなったインフルエンザに耐えながら家で授業の準備をした。


寒気がしたと思えば今度は暑くてたまらなくなって、かと思えば今度は頭が痛くて耐えられなくなる。


皆もこんな感じなのかな、若い子はこんなに重くならないとも早く治るとも聞くけど皆辛い思いしてないかな、と思いながら準備をして、それがたたって美菜実は学級閉鎖が明けた次の日まで熱を出して他の先生に代わってもらうことになった。


次の日には情けない、申し訳ないと思いながら代わってくれた先生達に礼を言って教室に向かった。


「秋葉先生が一番治るの遅かったね」と痛いところを突かれてしまい、ごめんねとまだ少しかすれた声で言ってから授業が始まった。


遅れた分を取り戻すように授業は少しだけ早足になったが、皆基礎ができていたのでなんとかひっついてきてくれた。

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