第51話
生活以外の科目も順調に進んで、六月に入る頃にはひらがなも全て教えきっていた。
次に大事になってくるのは音読だったため、楓ちゃんと花菜ちゃんに注意しながら授業を進めていった。
花菜ちゃんにはゆっくりで良いから、できるだけ間違えないように読もうね、と何度でも伝えてゆっくりゆっくり文章を音読してもらうことにした。
楓ちゃんには授業中には当てない代わりに家で音読を他の子よりも多くしてもらうように連絡帳でお願いしていた。
連絡帳を見る限り、家では問題なく音読ができているらしく安心した。
間違いなく音読ができるかどうか、つっかからないかどうかは今後の国語の成績にかなり響いてくる。ただ音読ができないだけ、と軽く見ると中高生になってから苦労すると大学で聞いていた。
実際自分も高校生の頃の国語の成績は芳しくなかった。
音読もどちらかと言えば隣の子に漢字の読み方を聞きながら読んでいたようなものだったので、それを講義で聴いたときには先に教えて欲しかった、と思っていた。
音読を間違いなくできる力は文章を読み飛ばさずに話せる能力や語彙力が関係してくるため、美菜実も徹底して授業と宿題で音読をしてもらうようにしていた。
「音読ができるとこれからの国語が得意になるからね」と何度も口を酸っぱくして言った。
算数では恵ちゃんが苦戦していたように足し算に入っていて、「分かった!」と言ったはずの恵ちゃんはテストになると分からなくなってしまったらしく授業の時間を増やし足し算を勉強していた。
恵ちゃんは何度も手を広げて一本ずつそれを折り曲げながら段々習得していった。
それが終われば今度は多くの小学生にとって最初の難関になる時計の読み方が始まる。ここでも多分躓く子が多いだろうと思って授業の計画を立てていた。
体育では怪我をさせないように様子を見ながら学校の体操を覚えてもらっていた。
音楽は音楽担当の先生に代わってもらっていたが、楽器の名前を覚えたり歌を習ったりしているらしい。
楓ちゃんにも配慮してくれているようで、声が出せない分楓ちゃんには楽器の名前の筆記テストをして成績をつけてくれていた。
もう二ヶ月以上一緒に過ごしていたため、楓ちゃんに対して「ずるい」という子も一人もいなかった。
むしろ最初の頃とは違って誰もが話しかけるようになっており、休み時間も楓ちゃんは輪の中にいることが増えていた。
今の小学校では理科と社会の代わりに一・二年生では生活の時間が入る。
その時期は理科の部分は殆ど朝顔の観察に充てていた。
朝顔はその観察や皆のこまめな水やりの結果が表れてどんどん大きくなっていった。
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