第50話
それからもしばらくの間良い天気の日が続いて、朝顔はぐんぐん育っていった。
月曜日のその日、また皆で観察日記を書いてもらう。
「前回とどこが違うかよく観察してみてね。それからこの時期には葉っぱに虫がつきやすいので、葉っぱやその裏に虫がついていないかよく確認してください。
これから綺麗に育つかどうかに関わるから注意して見てみてね」
そう言うと美咲ちゃんがぱっと後ろに退いて「虫とか美咲絶対にやだ、触りたくない。聡君美咲の朝顔の裏見て」そう言って聡君を後ろから押して代わりに観察してもらう。
「何にもついてないよ」それで安心したらしく美咲ちゃんは観察に戻った。
その後も女の子達から聡君は虫がついていないかの監視係として引っ張り回されて、自分の観察日記を書くのに時間がかかってしまった。
「今度朝水やりをする時には自分で確認するんだよ、きっと皆が思ってるよりもすごく小さな虫だから大丈夫。もしも虫がついてたら先生に教えてください。一緒に虫がいなくなるようにお手伝いします」
花菜ちゃんを除く女の子達は少し嫌そうな顔をしながら頷いた。
それからは毎日のように今度は水やりの後に葉の裏を確認する一年生の姿を見ながら学校に入った。
数日しても虫がついた朝顔はなかったらしく、全ての芽が出てきたので木曜日には出た芽を間引くことにした。
「今皆五つ芽が出てると思うんだけど、その中でも特に元気な芽を二つだけ残してあとの芽は抜きましょう」
そう言うと花菜ちゃん以外はなんで? もったいない、と言う顔をした。
「この芽はね、そうやってあげないと葉っぱが重なり合っちゃって光を取り込めなくなったり、栄養が足りなくなっちゃうの」
そこまで言ってもまだあまり納得できない様子だった。
「皆もご飯を食べる時、いつも同じ量のご飯が届くよね。でも、そこに二十人とか三十人とか他の子が来たらどうなるかな」
そこまで言って皆分かったらしい。
「美咲お母さんと一緒にやった、割り算でしょ」
「そうだね美咲ちゃん。まだ割り算はしばらくの間は勉強しないけどそういうことだよ」
「割り算って何?」
「恵さん、これから先に勉強するから待っててね。でもすごく簡単に言うとまあるいケーキをいくつに分けるか、みたいなお話だよ」
「難しそう、恵今やってる足し算も分からないけどできるようになるかな」
「なるよ、大丈夫。次の時間算数だからもう一回復習しようね」
そんな話をしながら皆自分のプランターの中からじっくり選んで二本だけ残して他の芽を抜いた。
次の時間の算数では恵ちゃんがかなり苦戦して、お母さんと一緒に先のことまで勉強しているらしい美咲ちゃんと助け合いながらなんとか習得した。
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