第49話
それから登校する頃には毎日のように早く学校に着いて水やりをする一年生の姿を見た。
ランドセルを背負ったまま皆せっせと水をやって、ペットボトルをプランターの横のスペースに挿してから学校に入っていく。
そうして過ごして一週間も経たないうちに、美菜実のクラス五人の朝顔の芽が出た。
生活の時間に皆で玄関まで出てきて、朝顔の様子を見て観察する。
「もう芽が出てるんだね、早いね」と皆でどっちの葉が大きいか、どっちの方が芽が出ている本数が多いか比べながらそれを観察日記に描いていく。
「絵を描くところはこれからどんどん育っていくから葉っぱの形や大きさが分かるように工夫して描いてみてね」
そう言うとそれぞれプランターを描いてそれと比べて芽を描くようにしたり定規で測った長さを書き込んでみたりとそれぞれの個性が見えるような書き方をし出した。
美咲ちゃんは定規で測ってミリ単位まで書き込んでいる。
聡君は自分の手の大きさと比べて絵を描いていた。
楓ちゃんと花菜ちゃんはプランターを描いてその中に芽が出ている様子を描いている。
こんなところでも皆の個性って現れるんだな。「工夫して描こうね」って言うだけにしておいて良かった。
それ以上のアドバイスをしていたら皆それに沿って描いてしまっていたかもしれない。
こういうところで皆の個性を潰さないように一つ一つ気をつけないと。
そう考えていたあたりで恵ちゃんが描き終わったらしく、他の子のプランターを見ようとうろうろし始めた。
「他のクラスの皆の方が大きい葉っぱが出てるね、こうなるのかな」と他の子のプランターとの差も書き込んでいた。
「よく観察してね、それからこうやって芽が出たときに葉っぱが二つになっていることを覚えておいてね。こうならない植物もあるので今度それも授業で勉強します」
「私知ってる、双子葉類っていうんだよね」
「お、花菜ちゃんすごく詳しいね。そうだよ、これから生活の時間でそういうことも勉強するからね」
「花菜ちゃんすごい物知りだね!」美咲ちゃんから褒められたことが嬉しかったらしく、「お母さんに教えてもらったんだ」と少し自慢げにする。
この子がこんな表情するなんて知らなかったな。やっぱりそれぞれ得意分野は違うから、それぞれ私が知らない姿も持っているんだろうな。
そういうところでこの子達がどんな風に反応するのかも知りたいし、今後の勉強にもなりそう。
その授業の時間は児童だけではなく美菜実にとってもかなり学びのある授業になった。
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