第37話
やっと皆の、美菜実の新しい学校生活が始まったところでゴールデンウィーク直前になった。
授業をしていても休みを楽しみにしているのがもう分かるような皆の表情。恵ちゃんは特に落ち着かないようでずっとそわそわしている。
楽しみだよね、初めての長い休みだもんね。これまで一ヶ月皆頑張ったもんね。そう思いながら教務室に戻って連絡帳を書いていく。
放課後、美菜実は全員にゴールデンウィークの注意事項が書かれた紙を渡して言った。
「皆さん、よーく聞いてね。ゴールデンウィークは楽しいこともたくさんあると思うけど、まずは安全に注意しましょう。”いかのおすし”は皆覚えてるかな?
学校の玄関に貼ってある紙覚えてる? じゃあ順番に皆で言いましょう。いか、は?」
「知らない人についていかなーい」皆が声のペースをそろえて言う。
紙をカンニングしている子もいるがそんなの全然大丈夫だ、確認して覚えてくれればそれでいい。
「よーし、合ってるよ。じゃあ次、の、は?」
「知らない人の車には乗らなーい」
「はい、じゃあ、お、は?」
「大きい声を出す」
「す、は?」
「すぐ逃げる」
「最後だよ、し、は何かな?」
「大人の人に知らせる」
「はーい皆さん完璧です。それから外に行って帰ってきたときには手洗いとうがいをちゃんとしようね。
ゴールデンウィークが終わったときに皆さんが元気に学校に来るのを楽しみにしています。じゃあまたね」
そう言って皆と挨拶をして、その日は皆の帰り支度を最後まで待ってから教務室に戻った。
「秋葉先生、途中トラブルもありましたが一ヶ月どうでしたか」
一学年の主任の先生に聞かれて席を立った。自分の間違いも不登校も当然全て伝えてあった。
「児童のしたいことがしっかり分かるようになりました。これまで至らなかった部分に気付くことができましたので、これからも児童と一緒に成長できればと思っています。それでも至らない部分は多々あると思いますので、これからもよろしくお願いいたします」
「新任の先生ですからあまり焦りすぎずに。ただ児童を預けていただいているので何かあればまたすぐに報告をよろしくお願いします」
その優しい言葉に一層やる気が出てくる。はい、とはっきり返事をして美菜実も学校から家に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます