第34話

「じゃあ次は聡さん。お話できますか?」そう聞くと大きく頷いて聡君が立った。


「俺の将来の夢は、消防士になることです。僕が事故で怪我をした時、すごく怖かったけど消防士の人が助けに来てくれました。


それがすごくかっこよかったのを覚えています。だから消防士になりたいです。


俺は右手が上手く使えません。だから、消防士になるためにお父さんと一緒に左手を上手く動かす練習を毎日しています。


その中でもキャッチボールする時間が大好きです。キャッチボールももっと上手になりたいです」


終わりです、と言って聡君が頭を下げる。皆から大きな拍手が上がった。


「聡さん、ありがとう。消防士になるのが夢なんだね。助けてもらった消防士さんみたいになれると良いね。毎日学校でも左手で文字が書けるように練習してるもんね。

おうちでも練習してるんだね。今日はプリント書いてる間もすごくかっこいい姿勢だったよ」


「聡君今日はすごく姿勢良かったと花菜も思います」


「花菜さんありがとう。聡さんはこれからもどんどん左手が使えるようになると良いね」


そう言うと聡君は嬉しそうにして花菜ちゃんにも「ありがとう」と言った。



「じゃあ次は楓さん。お話できそうかな? 先生が読もうか?」聞くと立ってプリントを渡してきた。


「楓さんの分を先生が読みます。


『私の好きなことは、お菓子を食べることです。誕生日やクリスマスの日に食べられるケーキはもっと大好きです。


甘くて美味しくて、いつもすごく嬉しい気分になります。私の将来の夢は、お菓子屋さんになることです。


おいしいケーキやお菓子を作って、私みたいに嬉しいと思ってくれる人がいたら嬉しいからです。


お菓子屋さんになるには力が必要だとお母さんから教えてもらったので、専門の学校に通って、おうちでも練習をしていいお菓子屋さんになりたいです』だそうです」



そこでまた皆から拍手が上がった。


「楓さん、プリント渡してくれてありがとうね。楓さんはお菓子が好きなんだね。お菓子屋さんの甘い匂い先生も好きだな。お誕生日ケーキも大好きだな」


「恵も好き!」「美咲も好きです」「僕も」と皆から手が上がる。


「じゃあ楓さんがお菓子屋さんになったら皆で食べに行きたいね。皆で楓さんの作ったケーキ食べてみたいね」そう言うと全員、特に楓ちゃんが嬉しそうな顔をして頷いた。


そこで思い出したことがあったので皆に話しておく。


「でも、もしも夢が変わってもそれはまた素敵なことだからね。もしも皆さんが大人になって、これはやっぱり違ったかも、って思ったら変えても良いんだよ。


だから、楓さんも、今のお話をしたから絶対にお菓子屋さんにならなきゃ! とは思わなくてもいいんだよ。もちろんお菓子屋さんになったら先生食べに行くね」



それを聞いて皆がうんうんと頷いた。


夢は変わってもなくても良い物だから。どんな夢も素敵なことに変わりはないから。それが伝わったかな。そう思いながら次に移った。

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