改めて、
第30話
次の日の朝、教室には六人の児童が座っていた。二日ぶりに六人全員がそろった。
隣の席に美咲ちゃんが戻ってきた花菜ちゃんは嬉しそうだった。
やっと、やっと全員に謝って再スタートできる日が来た。美菜実は教室の真ん中まで歩いて、全員の顔を見回してから言った。
「おはようございます。今日は六人全員が来てくれて嬉しいです。全員そろったので、先生からもう一度謝ります。
皆さんのお話をよく聞いて、同じ目線で物事を考えていなかったのを反省しています。皆さんの気持ちをよくよく考えていなくてごめんなさい。
今日からはもっと皆の気持ちを考えて過ごすようにします。
それから、六人全員がそろったので、今日の一時間目は皆さんとお互いに気持ちを話す時間を作ってその時に皆さんからお話を聞きます。
言いたいことがある人はその時間に伝えてください。先生もどうしたらいいのか一緒に考えます。
これまで先生がしてきた悪かったことや、皆さんをいやな気持ちにさせてしまったことを許してくれる人がいたら手を上げてください」
六人の手が、上がった。
やっと、この六人にとっての、美菜実にとっての一年生が、始まった。
一限が始まる前に美咲ちゃんに声をかけに行く。
「美咲さん、今日は来てくれてありがとう。昨日は大丈夫だった? 先生がお母さんを怒らせちゃったけど、あの後お母さんと上手くいったかな」
「全然。昨日はママあのままヒステリーだった。今日の朝も怒ってた。でも秋葉先生がちゃんと美咲はかわいそうな子じゃないって言ってくれたからいい。先生の方が正しいと思ったから美咲来た」
「そっか。先生もお母さんと上手くお話しできなくてごめんね」
「先生が謝ることじゃないよ、うちのママがおかしかっただけだもん。美咲がそういう風にママに伝えたのも良くなかった」
自分の親がまくし立てていたことを全部飲み込んだ上であそこまで反論できる子を、子どもだと一蹴していたことが恥ずかしくなるくらいだった。
自分が浅はかな考えを見透かされるのなんて当たり前だった。
美咲ちゃんはあれだけのヒートアップした話を全部飲み込んで、しかも自分が甘えられない道を選んだ。
障害者でなくなる決意をした。
確実に悪かったのは美菜実の方なのに、自分の伝え方が悪かったとまで言った。
それくらい美咲ちゃんは賢くて強かった。
やっぱりこの子達は、子どもなんかじゃない。”助けてあげなきゃいけない子”なんかじゃない。
一緒に同じ方向を見て、一緒に一歩ずつ進んでいく子達だ。
その時の美菜実はもう入学式の日とは違っていた。
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