第27話
「美咲さんが来てくれるようになったら改めて先生と皆さんでお話しする時間を取ります。今日皆さんから意見を聞けなくてごめんなさい。
でも今日は美咲さんがいないので普通の授業をします。先生に言いたいなって事がある人はそれまでに先生に伝える準備をしていてください。
今度は行動ではなくて言葉で伝えてくれると嬉しいです」
はーい、と返ってきてそう言ってそこからは普通の授業が始まった。
まだ何も言えていないのだから、まだ何も解消していないのだから当たり前かもしれないが、少し気まずそうな五人の子達。
でもごめんね。その言葉を聞くのも美咲ちゃんに来てもらってからだ。
皆のお話もきちんと聞きたいけど、美咲ちゃんにまず学校に来てもらわなきゃいけない。こんなのこっちの事情かもしれないけど、全員に謝ってそこから再出発しなきゃいけない。少なくとも私がそうしたい。
その日の授業は特にトラブルも、特別にいいこともなく終わった。誰からも、不満も謝罪も出てこなかった。
帰り支度を済ませて教室から出て行く児童を見送ってから職員室に戻る。
美咲ちゃんの家に電話をかけるのには大人になったはずの自分でも勇気が必要だった。それでもできるだけ早く電話をして、話さなければいけない。今度こそ心から謝らなければいけない。
そう思ってたった六人しか書かれていない連絡網を見て電話をかける。
「もしもし、市立第一小学校の秋葉と申します。大島美咲さんのご自宅でお間違いないでしょうか」
「はい、美咲の母です。秋葉先生は担任の方だと伺っていますが」
「はい。担任をさせていただいております。今日欠席のご連絡がありませんでしたのでご連絡させていただきました。ただいまお時間はよろしいでしょうか」
「はい。担任の先生でしたら私からも美咲のことについて話したいことがあります。今から美咲と学校に伺ってもよろしいでしょうか」
その声は決して穏やかとは言いがたいものだった。何を言われるのかなんとなく想像がついてしまう。
それでも間違えたのはこっちだ。誠心誠意、美咲ちゃんにも、美咲ちゃんを任せていただいてるご家族にも謝らなきゃいけない。
緊張した声ではいと答えた。
児童が歩いてこられる距離だ、すぐに到着する。到着したら玄関のインターホンを押してください、と伝えるとあっけなくその電話は切れた。
緊張してその二人が来るのを待った。
そして十五分しない頃、保管先生から「大島さんとお母様がお見えです。秋葉先生にご用だそうです」と伝えられた。
緊張して玄関に行って、教室に案内して小さな机を並べた。
謝らせて、ほしい。もう一度教室に来て欲しい。そう思って二人と向かい合った。
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