第25話
「先生私すみませんでした。児童のこと、あの子達のこと何も見ていなかった。それで先生のことまで都合よく利用しようとしたんです。
先生なら私は悪くないって言ってくれると思ってました。でもそれも全部間違ってた。すみませんでした」
「いえいえ、それでも今気付いたのが秋葉さんの良いところですよ。私は謝られるような事は何一つしていない。
教え子に教えを請われてただ私が思っている事を教えただけのことです。それであなたに気付きがあったならそれが一番だ。
あなたが児童のことを見ていなかったと思うのなら謝る相手は私ではないでしょう。私は申し訳ないが今あなたがもう一度前を向けるようにするためにあなたのプライドを折りました。
上手く折れているなら、素直だったあなたにならできるでしょう。次にするべき事は見えましたか?」
「はい、ありがとうございます。私が謝らなきゃいけないのはあの子達に対してです。
いくらやり口が良くなかったとは言え、そんな卑怯なまねをしてまであの子達に拒否されたことを突きつけられたんだとここに来てやっと分かりました。
それに私はあの子達のことを子どもとしても障害者としてもどこか見下していました。
こんな時間になってしまったのであとは今日来てくれなかった二人が明日になって学校に来てくれることを願うことしかできません。
でも、もし来てくれたら今度こそ私があの子達の個性を、好きなことを、やりたいことを潰さない教育をします。あの子達と一緒に学びます。
もしもまた何かあったら頼らせて頂いても良いでしょうか」
「もちろん、私はいつでもここにいます。また躓いたらここに帰ってくればいい。躓いたのは走ったからです。決して悪いことではない。
ただあなたも先生一年目のまだ未熟な教師だったと言うだけで、その未熟なりに考えていたことが少し偏っていたと言うだけです。
私からもささやかですが明日その二人が学校に来てくれるように願いましょう」
「ありがとうございました。お時間を割いて頂いて。今度は良い報告ができるように頑張ります」
そう言って教授の研究室を出て学校に走った。もう外は真っ暗になっていた。お願い、明日あなたたちに謝りたいことがあるの。今度こそ一緒に頑張りたいことがあるの。
だから、これも私の勝手だけど、明日だけでも学校に来てくれないかな。お願いだから、それで変わった私を見ても見限ったら私から辞職するから。
あなたたちの学ぶ場所を奪ったりしないから。それだけは絶対にしないから。だから明日だけでも。
美菜実はそう思って事務仕事に戻ってから眠りについた。
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