晴れて……?
第20話
その次の一週間は同じように過ぎていった。よし、これなら大丈夫だ。この子達のこと、誰より分かって誰より見ていられるような先生になれる。向き合えてるし楓ちゃんのことだって解決してあげられた。
そんな期待は二週間が過ぎた頃に裏切られた。
学校に慣れてきたからか、児童が言うことを聞かなくなっていった。
「美咲さんここの問題を「美咲分かりません、他の人に当ててください」
「じゃあ……聡さんこの問題分かりますか? 「わかりませーん」
いや、本当に分からないならいい。本当に分からないならいいん、だけど。休み時間教室を出るときに聞こえてしまった。
「秋葉先生さっきの授業の時困ってたよね、なんかいい気味だった。あの顔見た?」
「見た見た、いいじゃんこのまま無視してようよ。恵もそうしてるから。ねえ美咲ちゃん、先生やだよね」
「そうだよね美咲もなんか秋葉先生気に入らないし。なんか美咲が人の気持ち分からないみたいなこと言ってきてたの嫌だったし。聡君も嫌なんでしょ?」
「嫌。ていうかあれ秋葉先生やり過ぎだったよね、俺も別になんとも思わなかったのにさ、勝手に傷ついたことにされてさ。俺だって普通に左手で書けるようになりたいのにノートに書かされるようになってさ、せっかくのドリル埋まらないの嫌なんだけど」
「それ本当にそうだよね。美咲もなんかすっごいいらついた。こっちは障害者なのに普通にできて当たり前みたいな態度取ってくるくせしてさ、普通にできるところばっかり障害者扱いしてなんか都合良く先生の自己満足に使われてるような感じ。勝手だよね先生」
その会話に入っていないのは花菜ちゃんただ一人。楓ちゃんも本心なのか仲間に入っていたいのか頷きながら話を聞いている。
私が何をしたって言うんだ、だってあなたたちには普通とは違う個性があるんだ。
だから私がその個性と上手く付き合っていけるように手助けしてあげてるっていうのに、何が不満なんだ。楓ちゃんなんて助けてあげたのに輪の中に入っている。
障害者扱いなんてしていない、ただ個性として受けいれられるようにしてあげているだけなのに。なんで私が嫌われなきゃいけない、私は皆の様子を見てる。
好かれることさえすれど嫌われる事なんてした覚えがない。大体私に言わずに勝手に授業妨害するなんて子どものやり方でしかないじゃないか。
そうだ、あの子達は子どもなんだ。だからしょうがない、多少のわがままや悪口くらい聞いてあげなきゃいけない。
子どもと同じ目線になってやり合うなんて馬鹿馬鹿しいことしているわけにはいかない。私は大人で先生なんだ、立場からしてもう違うんだから。
そう思って教室をそのまま後にした。
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