第19話
次の教科はまた国語。最初の一週間は四限まで受けて昼食を取ったら一年生の児童は授業が終わって下校になる。あと一時間だ、私の初授業日もあと一時間で終わり。
国語の教科書を手に教室に戻ると楓ちゃんが話の輪の中に入っていて安心する。よかった、この子も話しかけてもらえるようになってる。とりあえず成功してる。
やっぱり声をかけてあげて良かった。
「授業なので皆さん席に着いてください、もう一回国語です。今週は四時間目が終わったら給食を食べておうちに帰ります。さっきと同じようにひらがなの勉強をするのでドリルを開いてください」
さっきの要領で授業を進めていく。皆がひらがなの練習をしている間に連絡帳にそれぞれの親に宛てたメッセージを書いていく。
「亮太さんは今日一日初めての授業で発言もでき、ひらがなの練習も黙々と進めていました」
「恵さんは今日筆箱を忘れてしまったようなので、荷物の確認を一緒にしてあげるようお願いします。こちらでも一式のものの予備は準備してあります。授業中多少落ち着きのない部分はありましたが声をかけると集中してくれ、発語が苦手な子に対しても自分から話しかけてくれていました」
「楓さんは同じクラスの人に話しかけてもらえなかったようで、悲しい気持ちになっていましたので道徳の時間にそれについて全員に伝えさせて頂きました。それからは児童の輪の中に入っている様子が見られましたのでこれからも引き続き様子を見ようと思います」
「聡さんは左手での筆記が難しいようでしたので、ドリルの代わりにノートを使っての字の練習をしてもらっています。姿勢がまっすぐになるようにできるだけ様子を見て、できそうであれば今後他の児童と同じようにドリルでの勉強に移行したいと思います」
「花菜さんはひらがなの書き取りには問題はありませんでした。音読の際に少し話すのがゆっくりになったり多少言葉を飛ばしてしまうことはありましたが特に問題はありませんでした」
「美咲さんは他の児童の気持ちを察するのが苦手なようでしたので一旦考えてから話し始めるように指導させて頂きました。ひらがなの書き取りや文章の要約はよくできていました」
こんなもんかな、……おっと恵ちゃんまたどっか見てる。
「恵さん、もう終わっちゃったかな? もう少しだけ練習して待っててくれる?」
「はーい」
よし、これで大丈夫……他の子も大丈夫そうだな、やっぱり美咲ちゃんは全くはみ出してないし綺麗な字。
次に進むか。「皆さんできたみたいなので次の字に進みます。まだもうちょっと時間が欲しい人はいますか? ……いないようなので次に進みます」
そう言ってその時間はカ行も後半に入って終わった。
給食は食べるのが遅かった聡君に付き添って最後まで見守ってから帰りの会を開いて解散した。
とりあえず一日目は無事に終了、できることは全部やった。この子達がいい大人になるためだ、どれだけでも向き合ってやる。
そう思ってその日は次の日の準備に明け暮れた。
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