第18話

「じゃあここまでに考えたことを順番に発表してもらいたいと思います。言いたいことがある人はいるかな?」


そう聞くと美咲ちゃんが大きく手を上げた。美咲ちゃんどうぞ、立ってさっきみたいに聞きやすい早さで話してみてね、と言うとゆっくりめに話し始めた。


「このお話では、挨拶をすると、した人もされた人も気持ちが良くなると言うことが書いてあると思います。美咲は、今日学校に来るまでの間に横断歩道で案内してくれた人に挨拶しました。そうしたら、案内してくれた人もニコニコしながら挨拶してくれました。美咲はそれが嬉しかったです」


「皆で拍手をしましょう。美咲さんは朝から挨拶をしてきたんだね。良い気持ちになれて良かったね。……では、次に皆に聞いて欲しいことがある人はいるかな?」


今度は亮太君が手を上げた。「亮太さんは教室の角っこだから、皆に聞こえるように大きな声で話してみようね」と声をかけた。頷いた亮太君が話し始める。


「僕はこの話で挨拶するとその人との関わりができると思いました。このクラスの人も、まだ昨日は誰も知らなかったけど、昨日挨拶をしてからはどんな人なのか分かって話しかけられるようになりました。聡君とお話しできるようになって嬉しいので、挨拶はちゃんとするべきだと思いました」


また拍手が上がる。「なるほど、亮太さんは挨拶をしてから聡さんと仲良くなれたんだね。それはとっても素敵なことだし大切なことを勉強したね。皆も挨拶をしてから他の子に話しかけられるようになったかな?」と聞くと楓ちゃんを除いた全員が頷いた。


楓ちゃんに皆が話しかけてもらえられるようにするためにはどうしたら良いかな……


そう思って今度は皆の席の間を見ながら楓ちゃんのプリントを見た。


「楓さん、良いことが書いてあるね。先生から皆に発表しても良いかな?」頷いた楓ちゃんを見て発表した。


「私は声が出ないので挨拶が家族以外とはできません。だから毎朝必ず家族には挨拶をしています。私はまだ話せなくて皆と友達に上手くなれないけど、皆とも挨拶してお話ができるような友達になりたいです」


皆から拍手が上がる。「楓さんは昨日説明した通り、まだここでは普通にお話しすることができません。


でも皆とお友達になりたい気持ちは変わらないんだね。楓さんは、首を振ったり、表情で皆と話すことができます。


だから普通のお話とは違うかもしれないけど、楓さんに皆からもぜひ話しかけてみて欲しいです。


楓さんは頭の中ではきっといろんなことを考えているし、今度ひらがなが全部書けるようになったら文字で話すこともできるようになります。


それまでの間慣れるのには時間がかかるかもしれないけど、話しかけてみることはできますか?」


そう聞くと五人全員から返事が上がった。


「楓ちゃん次の休み時間一緒にお話ししよう」ともう既に恵ちゃんが話しかけているのを見てひとまず安心した。


その後も皆の意見を聞き、それに対しての他の人からの意見を聞いて三限の道徳が終わった。

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