第10話
教務室に戻って一旦全員の特性として分かったことを手帳に書き込んでおく。とにかくよく見てその子に合わせた指導をしなきゃいけない。
亮太君は今のところ目立った発語の問題はない。自己紹介でも普通に話せていたし、国語の時間に目立った悪いところもなかった。少し聞き取りにくい部分はあるけどそこまで気になるレベルでもないし他の子も聞き取れていた。
恵ちゃんは忘れ物と黒板を見続けるのが難しいことをなんとかしたい。忘れ物の方は連絡帳に書いて親御さんにもチェックしてもらうことにしよう。
黒板をなかなか見られないのだって、せっかくの少人数教育なんだから恵ちゃんだけに時間を割きすぎないように注意しながら隣でやってあげれば良い。
それでもどうしようもなかったら親御さんに連絡を取ろう。集中しなければいけないのはこの子にとっては辛いことかもしれないがこの子の将来のためだ。
大人になったときにまだ同じところに集中しにくかったらこの子が苦労してしまう。
楓ちゃんは今のところ問題なし。ただ次は算数だから指名しないように気をつけよう。
指名されたら余計に緊張してしまう上に話すことを強要された気分になって学校が嫌になってしまうかもしれない。
それだけは駄目だ、まずは楓ちゃんが安心して登校できるような居場所作りをしないといけない。
聡君は生まれつきではなく、小さな頃の事故で右手が麻痺してしまった子だ。まだ左利きとしていろんな事をするのは難しいだろうし、姿勢も左に傾いている。
姿勢をなんとかまっすぐに座れるようになれば勉強も今より楽になるかもしれないから授業中に確認。
花菜ちゃんは一文字を書く程度ならまだ大丈夫みたいだ。
ただこれから他の科目を勉強し始めたら教科書を読まなければいけなくなる。きっとそれはまだあの子には難しい。
教科書は必ず音読することにして、国語の時間に短い文章から読んでもらうことにしよう。
確かお母さんから連絡帳に書かれていた情報によると文字がぶれたようにみえるらしい。勉強した通りなら強度の乱視のようなものだ。ゆっくり進めて嫌じゃなくなるようにしてあげなきゃ。
美咲ちゃんは勉強については今のところ一番ついてこられている。文字もはみ出さないように綺麗に書けていたし、その後の練習も黙々とできていた。
ただ児童同士でのコミュニケーションに関してはちょっと注意。共感が苦手だと言われているから少し喧嘩になりやすい可能性がある。
そこまで書いたところで授業開始十分前のベルが鳴った。次は算数だ。教科書を持って教務室を出て教室に向かった。
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