第6話

教室の中には小さな机と椅子が横に並んでいて、六人の児童が座っていた。全員が綺麗な洋服に身を包んでいる。



小学校では特別支援級は児童が六人までに対して教師が一人付くことになっているのでこれが最大人数だ。


教室に入ると児童全員が自分の方を見ていた。皆少し緊張したような、落ち着かないような様子でいる。あなたたちも今日が皆と会うのは初めてだもんね。私もちょっと緊張するよ。でも大丈夫だよ、私がいるからね。


教室の真ん中まで歩いて、さっきと同じように挨拶をした。


「皆さん、おはようございます。入学おめでとうございます。今日から皆と一緒に勉強したり活動したりします、秋葉美菜実です。秋葉先生って呼んでください。先生も学校の先生になって初めての学校なので、皆と同じ一年生です。今日から一緒に頑張りましょう」


六人の子達が皆はーいと合わせたように言った。ほら、やっぱり可愛い。この子達と私はこれから一年間勉強していくんだ。楽しみ、きっとこの子達も初めての小学校が楽しみだ。一緒に頑張ろうね。


「じゃあ皆にも先生と同じように自己紹介をしてもらいます。まずは一番右の加藤亮太さんからお願いします。名前と、小学校一年生で頑張りたいことを皆に教えてあげてね」


そう言うと端の席の小さな男の子が立って小さな声で話し始めた。


「加藤亮太です。一年生になって頑張りたいことは、友達をいっぱい作ることです。よろしくお願いします」


「せんせー聞こえなかった」と逆端の女の子が大きな声で言った。


「亮太さん、おんなじ事で良いからもう一回、もう少し大きい声で言えるかな?」

すると今度は大きな声で言い始めた。


「加藤亮太です。一年生になって頑張りたいことは、友達をいっぱい作ることです。よろしくお願いします」


最後の方は小さい声に戻っていたが十分全員には届いたらしい。「亮太さんありがとう、皆で拍手しましょう」と言って美菜実が拍手するとそれに合わせて拍手した。


確かこの加藤君は自閉症。でも今皆の前で挨拶できた。少しだけ聞き取りにくい部分はあったけどすごいじゃん。やっぱり苦手なことばっかりじゃないんじゃんね。


そう思いながら次の子に声をかける。


加藤君の隣の席に座っていた女の子が立って話し始めた。


「高橋恵です。小学校一年生になって頑張りたいことは、テストで良い点を取ることです。よろしくお願いします」


この恵ちゃんはADHD。でもちゃんと落ち着いて必要なことが話せてる。話が飛んでもいないし順番通りに話せてる。


こんなの普通学級に入っても大丈夫なくらいだ。また皆で拍手をした。

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