晴れて、
第5話
特別支援に関する卒論を仕上げて大学を無事に卒業した美菜実は晴れて小学校の教員になった。
行く先の小学校も無事に決まって、その日から美菜実は”先生”としての一歩を踏み出そうとしていた。
勤務先の石川県の小学校に着いて外から学校を眺める。学校の玄関から見える窓には大きく「明るく 楽しく 元気よく」と書かれてあった。
懐かしいな、私の小学校もこんな感じだった。そういえば体育館にもこういうの書いてあったな。自分が小学生の頃に戻ったような不思議な気分。
私も”明るく、楽しく、元気よく”だ。今日から私も先生一年生。待っててね皆。先生と一緒に頑張ろうね。
そう思って小学校の玄関を通り、まだ殆どうち履きしか入っていない靴箱を見てこれから小学生達が登校してくるところを想像した。
きっとみんな小さくて可愛いんだろうな。
そこから逆戻りして教務室に向かう。教育実習で実際に来たことがある小学校だったのでなんとなく校内の教室の位置は覚えていた。
早くも先生達が仕事をしている中に大きめの声で「おはようございます」と言いながら教務室に入った。教頭先生に自分のデスクを案内されてそこに座る。今日からここが私の席、ここが私の職場。教室にも早く行きたい。
朝のミーティングで一番前の黒板の前に新しく来た先生達が誘導されて自己紹介を、と言われた。
他に並んでいるのは皆他の学校から移ってきた先生ばかりらしく、近くの小学校の名前を挙げてそこから来ました、と話していた。
自分の番は最後だったので緊張していてその先生達の名前は覚えられなかった。端から田中さん、近藤さん、中村さん、あれ、中村さんが先だっけ。
いやもう無理覚えられない。緊張してるしその辺はまた今度覚えることにしよう。先生達だって名札もつけてるし。
そして自分の順番が来て大きな声で挨拶をした。”明るく、楽しく、元気よく”だ。
「おはようございます、秋葉美菜実です。本日から特別支援級の一年生のクラスを担当させて頂くことになりました。新任のため至らない部分も多くあるとは思いますが、児童と真摯に向き合って一生懸命指導しますのでよろしくお願いいたします」
そう言って頭を下げた。ミーティングはそのまま進んで実際に朝の会が教室で行われる時間になった。案内されるままに一年生の特別支援級のクラスに案内される。
ここが、これから私が皆のことを見て、向き合って、手助けして一緒に過ごす教室。
楽しみだ。私の指導で人生が変わるような子がいるかもしれない。そんな子に、私も出逢いたい。
そう思って教室の扉を開いた。
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