第3話

大学二年生の秋学期の履修登録をしようとしていたときに、普通の教職科目に混じっていたものがあった。


”特別支援教育Ⅰ”ーーなんだそれ?


美菜実は特別支援教育に興味がわいてその授業のシラバスを開いた。


「特別支援教育とは障害のある子どもの自立と社会参加をするための主体的な取り組みを支援する、と言う視点に立ち、対象となる子ども一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を確認して伸ばし、学習や生活で抱える困難さを軽減し改善するための適切な指導や支援を行う教育です」


ちょっとまって言い方が小難しい。でも要するに障害がある子が普通の子みたいに学べるように手助けする先生ってこと? だよね。小学校であったひまわり学級みたいなところってことだよね、きっと。確か少人数で教室で勉強してたな、あの子達。殆ど一緒に勉強した記憶はないけど。


でもなにそれ、やりたい。だって障害を抱えてる子にだって勉強する権利は当たり前にあるし、その子達はきっと普通の子達よりも大変な事が多いんだ。


その子達が私と一緒に学校生活を送って、勉強して、その苦手をなくしたりできることを増やしたりできたらきっとその子達の今後の人生がもっともっと素敵になる。


きっと障害もはねのけて生きていける素敵な大人になってくれる。障害だってきっと自分の個性として受け入れられる子になってくれる。


それってどんなに素敵なことだろう。その子の人生が変わるその瞬間に立ち会わせてもらえるってことなんだもん。私が一番したいことだそれって。


どんな困難かは分からない。でもきっと特別支援の世界に来る子はきっと普通の子よりも多くの壁にぶち当たる。その時にその壁をよじ登る手伝いができるんだ。

壁は一つずつ越えていけるって教えられるんだ。


自分にも普通の大人になれるんだって思ってくれたらすごく嬉しい。だってきっと教室に来て初めての集団生活を体験して難しいことを見つける子がきっといるんだから。もしかしたらその子はその時自分は皆と違うんだって、普通の大人にはなれないんだって悟ってしまうかもしれない、閉じこもってしまうかもしれない。


その中から救い出して外の広い世界に出してあげることができるんだ。自分なりに人生が送れるって思えるようになってくれるかもしれないんだ。


ーーそれに、自分のことを、苦手なことを認めてくれた先生がいたって思ってもらえたら、その子の人生にとって素敵な思い出に残れるかもしれない。私そういう先生になりたいんだからこれぴったりじゃん。


そう思って美菜実はその授業を受講することに決めた。

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