第109話
一年後、可奈は一生懸命で純粋な桃に惹かれて振り向いた。
「これまで待たせちゃってごめんね。桃がずっと私一人を見続けてくれたことに、それと桃の純粋で明るいところに、私も桃のことが好きになりました。まだ待っててくれてるかな? よければお付き合い、してもらってもいいですか?」
「はい! ずっとずっと待ってました、振り向いてもらおうと頑張ってる間にもっともっと可奈先輩のことが好きになりました。大好きです、先輩、付き合ってください」
「ありがとう。傍にいようね」
「ずっと一緒にいたいです! 傍にいさせてください」
「それともう可奈先輩じゃなくて可奈って呼んでほしいな、もうただの先輩じゃないし」
「ちょっとまだ緊張します……可奈さん、でいいですか?」
「いいよ、桃。大好きだよ」
「私も大好きです、可奈さん」
可奈は桃を抱きしめた。その甘い香りに、腕の中で泣き始めた桃に、可奈は愛おしさを感じた。やっと可奈に本当の恋が、ーー運命の恋が、舞い降りた。
唯への想いは綺麗な思い出になって心の中の宝箱にしまわれた。今でも大切な思い出だが、その時の可奈の気持ちはもう桃に向かっていた。
唯、これまでありがとう。やっと、やっとあなたへの恋を思い出にできたよ。やっとあなたと純粋な親友でいられるよ。
結局誰の唯一にもなれない人なんていなかった。
可奈はその日唯に久しぶりに連絡を取った。
「桃って後輩、っていうか唯の同級生になった子いたの覚えてる? ……そうそう、私が唯に紹介したあの子。実は唯の結婚式の日に桃に告白されて、最近ずっと追いかけてきてくれる桃のことが好きだってようやく気づいたの。今日桃に話して、正式にお付き合いすることになった。これまでありがとう。やっと心から言える。私、幸せだよ。唯、結婚おめでとう。宙と一緒に幸せになってくれてよかった。これからもずっと、唯一の親友としてよろしくお願いします」
唯は自分のことのように喜んで泣いた。昔から幸せな恋愛が一度もできなかった可奈が、やっと一途に愛されて愛す恋愛ができるのだと思うと嬉しかった。
「可奈おめでとう! 私はずっとずっとあなたの親友だよ、だからこそすごく嬉しい。可奈のことだけを見てくれる人がやっとできたんだもんね。これまで幸せな恋愛ができなかった分、……私のことを好きでいてくれた分、今度は可奈が幸せになってくれたらすごく嬉しい。もちろん親友としてこれからもお願いします」
「私の話で私より怒って私より喜んでくれるとこ変わってないね、そういうとこ、”親友”として、大好きだよ。やっと唯への気持ちが思い出になった。すごくすごく綺麗な思い出になった。ありがとう」
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