そして

第108話

「いつか幸せになって。もちろん私と一緒に。でもきっと可奈のことだけを見て愛してくれる人が必ずいる。私可奈のことが大切で大切でたまらないから、絶対に幸せになって」


そう言ってブーケトスの代わりにブーケを可奈に渡した。


お色直しの衣装でも唯はその会場にいる誰よりも美しかった。ケーキカットをする瞬間も、宙を見つめている瞬間も、誰より綺麗だった。




式が終わり、披露宴に向かう途中で可奈は後ろから呼び止められた。


呼び止めたのは唯とも親しく、自分とはサークルも同じ為より親しかった一つ下の後輩の桃だった。桃はいつになく緊張したおももちで話し始めた。




「可奈先輩。……私、ずっと可奈先輩に憧れていました。それで、……それで、さっきのスピーチを聞いてはっきり分かりました。……私、可奈先輩のことが好きです。女性として、恋愛対象として好きです。私なんかが使うのはきっとまだ早いけど、背伸びした言葉を使えば、愛してます。まだ唯先輩のことが好きでもそれでいいです。いつか振り向いてもらえるように追いかけます。絶対、振り向かせます。だから、……だから、それまで待っててください」


その真剣なまなざしを見れば、その告白が嘘でないことは明らかだった。その目は、唯が宙に向け、そして自分もまた唯に向けていた目と同じだった。


そのまっすぐな瞳に、意志を固めた表情に、どこか唯に似たものを感じた。


「ありがとう。今はまだ受け取れないけど、それでもいいなら待ってる」


「! ありがとうございます、待っててください!」


それだけ言って桃は走って行った。

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