第106話

結婚式当日が来た。二人で決めたチャペルのある結婚式場の一室でスーツに袖を通す。やっとドレスを見せてもらえる、そう思いながら宙は緊張で少し震えていた。


「準備できたよ、宙、見ていいよ」


その言葉に唯がいる部屋のゆっくりとドアを開けた。


「……綺麗だ……」


本心が口から漏れた。これまでも出会って初日に見惚れたくらい唯は綺麗だった。


それでも、細かいレースの装飾が入った肩に、Aラインの長いチュールスカートのドレスを着た唯はこれまでのどの瞬間より綺麗だった。


「……惚れ直してもらえた?」


「もちろん。こんな楽しみができるならついていかなくて正解だったと思うくらい綺麗だ。愛してる」


「良かった。私も愛してる。他のドレスもたくさん着たけど、これが一番宙が好きだろうなって思ったの。可奈もこれが一番って言ってくれたし、自信を持って貴方の隣に立てる私になりたかったの。……宙、震えてる?」


「そりゃこんなに美人で綺麗な人が俺のところに歩いてくるんだと思ったら震えるよ。……唯だって震えてる」


「やっぱり結婚式だと思うと緊張しちゃうね。緊張してるのが私一人だけじゃなくて良かった。宙も一緒なら安心」


「そうだな。……二人で幸せになろう」


「ちょっと言うの早いよ、誓いの言葉はまだ先」


「でも今思ったんだ、式の途中じゃ言えないかもしれないだろ?」


「そうね、二人で幸せになろう。大好きだよ」

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