第104話
結婚式のドレス選びに宙は参加さてもらえなかった。
「今日は来ちゃだめ、可奈といってくる」
「なんでだよ新郎は俺だろ? 可奈に取られるのかよ、一緒に行かせてよ」
「駄目なものは駄目ですー、宙には一番きれいな状態だけ見てもらいたいんですー」
こうなったときの唯がいうことを聞かないのはこれまでの経験で分かっていた。これ以上いっても無駄か、と宙は粘るのを諦めて家で留守番させられる羽目になった。
唯のドレス姿なんてどんなドレスでもきれいに決まってる。
なんなら他の人の結婚式に行ったって豪華なドレスを着た新婦より目立つはずだ、と贔屓目に見ているかもしれなくても本気で思った。
唯のドレス姿を思い描いてはそれを見せてもらえないことに不満がつのる。
結局その日宙はいてもたってもいられずに家で仕事に打ち込んで一日を過ごした。
唯からのこれから帰るというメッセージに唯の好きなパスタを用意して待つ。
帰ってきた唯に「決まった?」と料理の火を止めて急いで聞きに行くと「残念ながらまだ見たいのが半分あります、明日も宙はお一人です」といわれてぶすくれた。
「しょうがないじゃん、試着なんてメイクもヘアセットもそこそこのままでするんだよ? そのままの姿じゃなくてちゃんと一番きれいになった私で結婚式当日に惚れ直してほしいの」
「もう惚れてるんだけどそれでも駄目?」
いつもなら通るおねだりの顔をして上目遣いを試みるも駄目、と一喝されて結局次の日も仕事で一日が潰れた。
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