第102話
両家の両親とも、誠実で濃やかな宙に、優しくて気の利く唯に結婚を快く承諾した。
唯の両親は宙に興味津々で唯のことをたくさん聞いてきた。宙は出されたご飯を美味い美味いと言いながら食べて応えた。それも母は嬉しそうに見ていた。
「実は唯結構甘えてくることも多いんですよ。この前なんか家にいるとき俺に甘えようとして「ちょっと待ったストップそれ以上は言わせない、駄目、絶対駄目婚約者権限でお母さんにもお父さんにも聞かせられない」
「あら唯そんなに甘えてるの? 私たちにすら病気の時もそんなに甘えてこなかったのにねえ、お父さん?」
少しさみしそうな顔をする母に父はそうだなと答えた。
父はさすがに娘を手放すとなるとさみしかったようであまり話さなかったが、それでも帰り際机に手をついて「唯のことをよろしくおねがいします」と頭を下げた。
ああ、きっと私はこの人達にもっと頼ってわがままを言っても良かったんだ。もっと辛いって言っても良かったんだ。さみしそうな顔をしていた母の顔を思い出して家路についた。
「唯うつだったときもっと親に甘えても良かったのに。すごいいい人達じゃん」
「私も今そう思ってた。ずっと嘘ついて元気って言ってたけどもっと辛いとき頼れば良かったな。ちょっとお母さんさみしそうだったし」
「でもきっとその時の唯なりに家族が好きだからこそ甘えなかったんだろ。これからでも遅くないよ、いくらでも頼っていくらでも甘えよう。きっとそれも親孝行のうちだ」
「そうだね、きっとこれからでも遅くないよね、きっと」
「保証する。あと唯のお母さんのご飯の味も俺が保証する」
「おいしいでしょ、でもお母さんのとこ行っちゃったらやだよ」
「行くもんか、ここにこんな美人なフィアンセがいるっていうのに」
宙は唯を丸め込むのが巧かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます