第101話
更にその半年後、二人は結婚を決めた。
夜景の見えるレストランなんかじゃなくていい、されるなら家で普通にプロポーズされたい、と聞いていた宙はその通りにした。
記念日に仕事から帰ってきた唯に跪いて指輪の箱を開ける。
「僕と結婚してください。一緒に幸せになろう」
唯は宙に抱きついて泣いてそれを受け入れた。
「どうしよう、もう幸せなのにこれ以上幸せになったら代わりになんか不幸せが起きそう……」
「唯の不幸せはうつ病で一生分使い切ったんだ。早いとこ俺と幸せになれ」
その後の話し合いでも宙は唯のことを尊重し続けた。
「仕事を辞めろとは俺からは絶対に言わない。唯がやめたいんだったら俺が養うけどやりたいなら好きなだけやればいい。やり過ぎを止めることはあるけど家庭に入って日中一人で家事してろなんて言わない。でももし仕事辞めたくなったらすぐに教えて。辞めてもいいし日中どこかに遊びに行けるくらい俺が稼ぐから」
「わかってる、宙のことだから信頼してる。……子どもは? 宙ほしい?」
「一年弱辛い思いするのも痛い思いするのも唯なんだから任せるよ、俺は唯といられたら幸せだしいなくても十分。子ども出来たら忙しくなるだろうし子育てだって俺もやるけどそれでもある程度唯の負担になるのは間違いない。でもいたらその子が障害者だろうと健常者だろうと絶対に愛せる自信がある。
障害は神様からの試練だとか言うやつもいるらしいけど俺はそうは思わない。俺たちの子どもは、もし生まれるとするなら愛されて幸せになるために生まれてくるんだ。もちろん唯も、これまで苦しんできたけど唯も愛されるために、幸せになるために生まれてきたんだ。それは間違いない」
「そっか。愛されるために、幸せになるために、か。一人で生きていくためじゃないんだもんね。わかった。私も宙との子なら愛せる自信がある。……でも一個わがまま言ってもいい?」
「何? 唯からのわがままなんて珍しいし大歓迎だけど」
「もうちょっとの間は二人でいたいな。自分で言ってて恥ずかしいんだけど子どもができて宙を取られちゃったら自分の子相手にちょっと嫉妬しそう。女の子なら尚更」
「……実は俺も同じこと考えてた。男の子だったら今の俺絶対嫉妬する。もうしばらく二人きりでいよう」
「うん」
二人は幸せの絶頂にいた。
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