第95話

二人で生活して行くに当たっていくつかルールも決めた。


家賃と食費・生活費は基本的には折半、自分の趣味の物は自分で買う。お互いの仕事のことにあまり口は出さない。ただし明らかに無理をしている際は止めること。


家事はお互い生活サイクルが見えてくるまではできる方がやる。仕事から帰る時にはお互いに連絡を入れること。


掃除は基本的に土曜日、休日が土曜日に取れなかった際は代わりに日曜日にすること。食事は帰ったのが早いほうがなるべく作ること。ただし仕事を持ち帰った場合は連絡して仕事が終わるのが結果的に早かったほうが作ること。


ただしこれらはどちらかの意思や体調の問題で働けないときが来たら変更するものとする。また結婚したら代わる可能性もあること。


お互いに喧嘩していても夜までに仲直りして夜は二人で眠って翌日に喧嘩を引きずらないこと。朝は必ず笑顔で送り出すこと。



ここまで二人で合意して、最後に宙が付け加えた文句に唯が異議を唱えた。


唯はまだ無理をしてはいけない身なので無理はせずに宙に頼ること。


「私こんなルール作られた日には何もさせてもらえなくなる未来がもう見える! そのルールで家事を全部取られる気がする、私にもやることほしい」


「って言ってもまだ病み上がりだろ、再発させたくないの俺は。……そうだな、じゃあ唯朝には強いから夕飯の残り物でいいし俺の昼ご飯だけは頼んでもいい? もちろんそれも嫌だったらいいけど」


「嫌じゃない、毎朝心込めて作るね。あとは決めておきたいルールあるかな……」


「あんまり最初に決めすぎると唯それに固執するだろ、最初だしお金のこととかは細かめに決めたけど俺からしたら喧嘩しても夜一緒に寝ること以外はなくてもいいくらいだ」


「うわ宙やっぱり私のこと分かってるね、あんまり決めちゃうとそれ守るのに必死になっちゃうからこんなもんでいいのかな」


「決めなくてもどうせ唯は記念日も誕生日も覚えててくれるだろうし、それだって二人でいつも通りに過ごすんで十分だ。昼ご飯も体調悪かったり寝坊したりしたら作らなくていい、これはルールと言うより俺からのわがままみたいなもんだから。そしたら出勤途中に適当に買って済ませるし」


「甘えっぱなしになっちゃわない……?」


「俺が甘やかされてほしいの。唯を甘やかせるのがやっと俺だけになったんだぞ、これまでは半分可奈に譲ってたんだから。おとなしく甘やかされろ」


この「おとなしく甘やかされろ」という台詞をこの後唯は何度も聞くことになる。

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